最少手数競技入門 - ルービックキューブを少ない手順で解く by Sebastiano Tronto 第二版

333fm

本コンテンツは第二版の翻訳です。最新版ではありません。

Written by Sebastiano Tronto
Fewest Moves Tutorial - Solving a Rubik’s Cube with as few moves as possible
version 2
September 15, 2017
Original document (3rd edition): Fewest Moves Tutorial
Original document (2nd edition): Fewest Moves Tutorial
License under CC BY 4.0

Japanese Translated by kawam1123
version 0.3
January 15, 2020
License under CC BY 4.0

免責事項:
本ドキュメントは、2017年にSebastiano Tronto氏によって書かれたFewest Moves Tutorial(version2.0)を日本語に翻訳したものです。 2019年12月、本チュートリアルを日本語に翻訳されたものが公開されていなかったため、翻訳プロジェクトをスタートしました。本記事の内容については、最少手数競技に関する知識や用語を確認しながら翻訳を進めていますが、翻訳者の技量不足により不正確である場合があります。あらかじめご了承ください。
また、すぐに最少手数競技のやりかたを覚えたいという方には、既にWRCCTRCCの素晴らしい解説記事がありますので、こちらもあわせてご参照ください。
This documantion is a Japanese translated edition of Fewest Moves Tutorial (Second Edition) by Sebastiano Tronto. Since no translation in Japanese had been published at December 2019, I started a tranlation project for the tutorial. I am translating the document looking up the basic knowledges and the technical terms on FMC, but the translated content might be wrong by reason of my lack of translation and FMC skills. If you find any mistakes in the translation, please let me know!

第3版の公開に際して
2020/01/14に本チュートリアルの第3版が公開されました!この日本語版は、追って第3版の内容に沿って翻訳しています。第三版はこちらをご参照ください。。下記の内容は第2版によるものですので、ご注意ください。また、原著者がGitHubにリポジトリを作成し、原文のLaTeXファイルや画像ファイルなどを公開しています。 詳細はこちらをご覧ください。

翻訳にあたっての謝辞:
この素晴らしいチュートリアルを無料で公開してくれているSebastiano Tronto氏に最大限の感謝を申し上げます!
Special thanks to Sebastiano Tronto, a FMC superstar, for publishing this wonderful tutorial for free!
Un ringraziamento speciale a Sebastiano Tronto, una superstar FMC, per aver pubblicato gratuitamente questo meraviglioso tutorial!

翻訳者注:
本ドキュメントは、未完成です。原文はコメントアウトされた状態で保存されています。翻訳に協力してくださる方は、コメントアウトを外して日本語の翻訳を書き込んでください。翻訳の進捗はGitHubのリポジトリで管理しており、画像ファイルなどもこちらに格納されています。

翻訳進捗

ページ 進捗 メモ
序文 1-8 完了 2019/12/31完了
1章 Think Outside the Box 9-14 完了 2020/01/03完了
2章 How to Proceed During a Solve 15-34 完了 2020/01/09完了
3章 Advanced Tools 35-44 作業中 2020/01/11着手
4章 Some Other Methods 45-48 未着手  
5章 How To Practice 49-50 完了 2020/01/03完了
6章 In Competitoin 51-52 作業中 2020/01/03着手
付録A Other Resources 53-54 未着手  
付録B Notation 55-56 未着手  
付録C Last Layer Algorithms 57-58 未着手  

第二版への序文 (Preface to the Second Edition)

数年の間、このチュートリアルの新しいバージョンを作ろうと考えていました。いくつか修正や追加の必要な点があり、また、私自身の考え方が変わったことによって変更すべき点などがありました。

LaTeXで書き直そうとも考えました。LaTexのドキュメントは見た目がとても良くなるからです。ただし、唯一の欠点は、そうしてしまうと翻訳が難しくなるということです。このチュートリアルが高く評価されており、多くの他言語に翻訳をしてくれて、世界中で読めるようになっていくことを非常に嬉しく思います。翻訳者の皆さんそれぞれにお礼を言いたいのですが、ほとんどの方の名前を忘れてしまいました。

ですが、第二版を作るのをずっと後回しにしていました。大きな理由は、時間がなかったことではなく、モチベーションが足りなかったことです。しかし、2017年にパリで行われた世界大会 1では、このチュートリアルについて感謝を言ってくださる方に多くお会いして、必要なモチベーションを得ることができました。全ての人が見返りを求めずにほかの人を助けている。このコミュニティの一員であることの素晴らしさを思い出して、私も再び「自分のやること」をやりたいと思いました。

初版からの変更点のほとんどは見た目に関することです。最初のものよりけっこう長くなっていることに気づくかもしれません。この違いは、画像と空白ページによるものがほとんどです。文章を並べ替えて、単語のミスを修正しました(私の英語力はこの3年で成長してます!)。いくつか新しいことも加えたかもしれません。

次のような点を追加しました。

  • 2.3.3節:「その他のエッジ3-cycle」(このケースについてはもっと書くことがありますが)
  • 2.4.8節:「3エッジとコーナー」 インサーションについて
  • 3.6節:「ズレたセンター(skew centers)」について
  • 付録:回転記号とLLアルゴリズム

ほかにやったのは、ソルブ例にいい感じの箱をつけたことです。(下のほうをご覧ください)

主な理由は、この本を自己完結型にしたいと思ったからです。初版では多くのソルブが単にリンクされていただけでした。ハイパーリンクをつけていますが、脚注に完全なリンクもあわせて書いています。これにより、この本は電子機器と紙の両方で読めるようになっています。

パーツの色について話すことがありますが、配色は標準配色 2で、標準の向き(白がU、緑がF)でスクランブルすることを想定しています。

この第二版について言うことはこれぐらいです。次に進んでチュートリアルを楽しんでください!

本書について (About this Book)

この本は、WCA公式大会の公式競技のひとつである「最少手数競技(FMC、Fewest Moves Challenge)」と呼ばれる競技でよい結果を出すための指針となることを目的としています。もしあなたが世界キューブ協会 (World Cube Association) やスピードキューブの公式大会について知らないのであれば、少し先のイントロダクションを読んでみてください。

「最少手数競技」は、特定の状態の(スクランブルされた)ルービックキューブをできる限り短い手数で解くものです。使えるのはいくつかのキューブ、ペン、そして紙だけです。コンピュータープログラムの利用は禁止されており、通常は時間制限があります。(WCA公式大会においては1時間、あるオンラインのものでは1週間)

したがって、この本では一般的なアルゴリズムの説明はしません。一般的なアルゴリズムがFMCで役立たないということは、この本の残りの部分で繰り返し述べられており、次のようにまとめることができます。「たった一つのアプローチに限定することは、あまりにも窮屈!」

同様に、(短い)解法を生成するようなコンピュータープログラムについても言及しません。もしこのテーマに興味のある方は、www.jaapsch.netのコンピューターパズルについてのページを一読することをおすすめします。

前提条件

読者は(たとえ簡易LBLであったとしても)ルービックキューブの解き方を知っているものとします。さらに、通常のOBTM(外層ブロック手数)法の記法(イントロダクション内のリンク、付録Bを参照)と、基本的な用語(たとえば「2x2x2ブロック」)について知っていることが求められます。ただし、多くの専門用語は本文中で解説されます。

ソルブ実例について

第二版では、本書を自己完結的にするため、いくつかのソルブ例を収録しています。次のような枠の中で表示されます。

2C2E Insertion - Example

スクランブル: B' L' D2 R U F' U' L U2 D R2 U2 F B R2 B U2 B L2 B2 U2
B' F D2 //Pseudo 2x2x1 (3/3)
L' B * R2 //Pseudo 3x2x2 (3/6)
F2 D F' D2 F //Found using NISS (5/11)
R' D' R D2 F U2 //Found using NISS (6/17)
* = B2 L B L' B D2 F' R F D2 //2c2e insertion (9/26)

このソリューションの記述のなかで、決してx[f2]などの「持ち替え記号」を書いていないことに気付くかもしれません。解法を考えるときにキューブを持ち替えてはいけないということではありません。もし持ち替え記号を使わない記述がよくわからないなら、6.1節までスキップすることがオススメです。

謝辞

世界中のスピードキューブコミュニティに対して、どんな時もテクニックやメソッドをオープンに広めていることに感謝を申し上げたいです。これによって、誰もが(これまでに)見つかったすべてのことを自由に学ぶことができるようになります。このチュートリアルも同じように役に立つことを望みます。

あわせて感謝を申し上げたいのは、改善点を指摘してくれた全ての方です。間違いを指摘してくださったり、このチュートリアルを(古い版も含めて)翻訳してくださったりしました。いずれ忘れてしまうでしょうから、全ての方の名前を挙げるのは控えます。

第二版では、visualcube3alg.cubing.net4を使いましたので、この2つのツールの作者であるConrad RiderとLucas Garronには、特に感謝を申し上げます。

免責事項

ご存じかもしれませんが、英語は私の母語ではありません。もし文章が下手だったり、間違いを見つけたりした場合、私にご連絡ください。 sebastiano.tronto [at] gmail [dot] com

訳注:
英語は翻訳者の母語でもありません! 本文の内容ではなく、翻訳のミスを見つけた場合は、私にご連絡ください!

目次

訳注:
自動生成しましたので、本項目は省略します。

イントロダクション

ルービックキューブをできる限り速く解くということは面白いものですが、さらに面白いのは一番少ない手数で解くということです。これが最少手数競技のゴールです。 最少手数競技はFMCあるいはFewest Moves Challengeと呼ばれます。

公式大会

FMCはWCA(World Cube Association、世界キューブ協会)の公式種目として知られています。WCAはルービックキューブやそれに類するパズルの大会を統括する組織です。WCA大会規則(第E条)に書いてあることをまとめると次のようになります。

  • スクランブルの書かれた紙が全競技者に与えられる
  • 時間制限は60分
  • 以下の道具を使用できる
    • 紙(ジャッジによって支給される)とペン(ジャッジによって支給される、任意で競技者が持参)
    • 最大3個のルービックキューブ(競技者が持参)
    • ステッカー(競技者が持参)
  • 解法について
    • 解法は外層ブロック手数(OBTM記法)を用いて記述したものを提出する。
    • 持ち替え記号、面操作(R、U2、L’など)、外層ブロック操作(Rw2、FW’など)が許可される。中層回転(M、E、S)は許可されない。
    • 持ち替え記号は0手とみなす。それ以外の操作は1手と数える。
    • 競技者の解法はスクランブル手順の任意の部分に直接由来してはならない。解法中の各手順の意図を説明できるようにしておかねばならない。

最後のルールを適用するために、2016年からFMC用のスクランブルには最初と最後にR' U Fが加えられることになりました。

大会における最高記録は、Tim Wong (USA)、Marcel Peters (ドイツ)、Vladislav Ushakov (ベラルーシ)による19手のものです。3回の試技の平均では、Marcel PetersとBaiqiang Dong (中国)による24.33が世界記録です。Marcel Petersは2017年の世界大会で世界チャンピオンのタイトルを獲得しました。

訳注:
翻訳時点(2020/01)において、世界記録はさらに更新されています。
現在の世界記録は、本チュートリアルの執筆者であるSebastiano Trontoによる単発16手、平均22.00手です。2019年6月15日-16日に開催されたFMC 2019において達成されました。 2019年に開催された世界大会では、Firstian Fushada (符逢城) が単発24手、平均25.33手で世界チャンピオンのタイトルを獲得しました。
また、日本においては、Shuto Ueno (上野柊斗)が単発19手、平均24.00手の日本記録を保持しています。この単発記録はアジア記録(AsR)でもあります。

このチュートリアルのゴール

このチュートリアルのゴールは、FMCでよい結果を出すためによく知られたテクニックをまとめることです。 いくつかの説明は詳しく記述して実例もつけていますが、単に総合的な説明を書いて学習のためのリソースを提案しているだけのものもあります。

スクランブルシート 公式スクランブルシートの例

第1章:既成概念にとらわれずに考える (Think Outside the Box)

あなたのメイン解法が何であれ、その一つの解法に縛られるのはFMCにおいて最悪のやり方です。一つの解法/メソッドに限定してはいけません。 あらゆる状況を活用するようにしましょう。

たとえば、あなたが2x3x3ブロックを作ったとしましょう。ここからいくつもの可能性があります。最後の「クロス」エッジを揃えてからCFOPにおけるF2Lをやっても構いません。Petrusのようにエッジの向きを揃えもよいですし、FreeFOPやHeiseを使ってもっと自由にブロックを作ってもよいでしょう。どの解法を使ってもよい結果になるでしょう。なので、もっともよいやり方は、これを全部使って解いてしまうということです。(全部でなくても、その多くを使うのでもよいです)

発想を柔軟にして「既成概念にとらわれず」に考えるには、少し逆説的ですが、まず多くの既成概念を知ることが最良の方法です。つまり、多くの解法を学びましょう。

まずはFMCにおける最も有益(だと私が考える)な解法について簡単に書きましょう。
解法の開発された歴史やスピードソルブにおける利点/欠点については話しません。それぞれの解法について、オンラインで参照できるチュートリアルのリンクをつけますが、Googleやspeedsolving.comなどでさらなる情報を調べることをお勧めします。speedsolving.comのフォーラムにある「初心者向けスピード解法の選び方ガイド(Beginner’s Guide to Choosing a Speedsolving Method)」はよく使われている4つの解法について知るよいきっかけになるでしょう。(スピード解法について考えるなら、という注意書きが付きます)

次の4つの解法についてそれぞれ書きます。

  • CFOP
  • Roux
  • ZZ
  • Petrus

1.1 Petrus

Petrusのステップは次のようなものです。

  1. 2x2x2ブロックを作る
  2. 2x2x2ブロックを2x2x3ブロックに拡張する
  3. エッジの向きを揃える
  4. 最初の二層を揃える(F2L)
  5. Last Layer(LL)を揃える (本来は3つのステップに分割されています)

ブロックビルディング5のスキルを高めることは、FMCの上達のために必須のものです。 Petrusを学ぶことでこのスキルが高まるでしょう。ステップ1とステップ2の解き方を効率よく学ぶためには、常にブロックビルディングするための違ったやり方を探さなければなりません。つまり、熟練のキューバーのソルブのリコンストラクションから学ぶことが非常に役に立ちます。 熟練者は(ほとんどいつも)最適な2x2x2ブロックを見つけることができるので、あなたの解答と最適な解法6を比較してみること役に立つでしょう。

ステップ3では、エッジがキューブのどこに位置しているかに関わらず、エッジの方向を認識することを学ぶことができます。反転したエッジはFMCをやる上で最悪のものですから、これもまた重要なスキルです。このステップでは、ZZのほうがPetrusよりもわかりやすいかもしれません。

Last Layerのアルゴリズムを全て学ぶ必要はありません。他のメソッドについても同じです。次の章ではどのように前に進めばいいのかを説明しますが、この時点では「Last Layer」を処理するステップは最少手数競技のソルブにおいてはあまり利用されないということを覚えておいてください。

Lars Petrus Website: http://lar5.com/cube/

1.2 Roux

Rouxのステップは次のようなものです。

  1. 3x2x1ブロック(FB, First Block)を作る
  2. 最初のブロックの反対側に3x2x1ブロックをもう一つ作る (SB, Second Block)
  3. LLのコーナーを揃える。M列を気にする必要はない (CMLL)
  4. 残りの6つのエッジを揃える (LSE, Last Six Edge)

Petrusはブロックビルディングを学ぶには素晴らしい解法ですが、Petrusだけを使うというのは間違いです。あわせてRouxのブロックビルディング(特に最初の2つのステップ)を学ぶことで、スキルが完成に近づくでしょう。また、この解法では熟練のキューバーの解法から学ぶことが多くあります。

ステップ3ではLast Layerについて書いたことはここでも変わりません。ステップ4ではこの弊害を除くことができますが、Mのような中層回転は全て2手としてカウントされることは忘れないでください!(少なくとも、Rouxの標準的なLSEのやりかたは避けましょう。つまり、MとUだけで解くやりかたです)

Waffle’s Roux Tutorial: http://wafflelikescubes.webs.com/

訳注:
実際の最少手数競技においては、解答用紙にM、S、Eの中層回転(スライスムーブ)の記号を書くことは認められていません。規則12aに定義されている3x3x3の回転記号のみを使うようにしましょう。ここでは「RouxメソッドのやりかたでM列を使う(解答用紙にはR L’のように書く)と2手としてカウントされ、手数が多くなりがちになるので避けたほうがよいですよ」ということを言っています。

1.3. ZZ

ZZのステップは次のようなものです。

  1. EOLine(全てのエッジの向きを合わせて、DFとDBに置くことで、キューブをRLU回転だけで解けるようにする)
  2. F2L
  3. Last Layer

前述のように、エッジオリエンテーション(EO)を認識して解くことは非常に有益なスキルであり、ZZは間違いなくこれを学ぶ最良の方法でしょう。「エッジの向きを揃える」というのは、「ブロックビルディング」よりも抽象的な概念ですから、最初は難しく感じるでしょう。しかし、パニックにならないでください。練習すれば簡単になっていきます!

ステップ2はPetrusのステップ4と同じものですが、R面とL面に同時にブロックを作らなければなりません7。これをやることで、さらにブロックビルディングのスキルが高まるでしょう。

1.4. CFOPとFreeFOP

古典的なCFOPのステップは次のようなものです。

  1. クロスを作る
  2. 4つのコーナーとエッジのペアを挿入する
  3. OLL (Orient Last Layer)
  4. PLL (Permute Last Layer)

古典的なCFOPFMC向きのあまりよい解法ではないと考えられています。しかし、コーナーとエッジのペアを挿入する別の方法をしっておくことは役に立つことがあります。

FreeFOPでは、最初の二つのステップは「自由な」ブロックビルディングF2Lに変わります。

何にせよ、スキップができない限り、Last LayerをOLLとPLLで解くことはまったくおすすめできない方法です。

Badmephisto’s Tutorial: http://badmephisto.com/

1.5 キーホールF2L

キーホールは厳密にはキューブの解法ではなく、最初の二段を解くためのテクニックです。LBL(Layer by Layer)からCFOPの中間にあたる解法として位置づけられています。ステップは次のようなものです。

  1. クロス
  2. 1段目に3つのコーナーを配置する
  3. 3つの中層エッジをインサートする。「自由に」コーナーを使う
  4. コーナーとエッジのペアをインサートする。CFOPやLBLと同様

最初の2ステップをブロックビルディングに置き換えることと、中層のエッジを同時に揃えることで、効率化するとよいでしょう。クロスと3つの中層エッジを揃えてから、3つのコーナーを「自由な」エッジを使って揃えるというバリエーションもあります。

非常にシンプルですが、この解法はFMCにおいてとても役に立ちます。

1.6. Heise

  1. 2x2x1の「四角」を作る
  2. 「四角」を揃えてエッジを合わせる
  3. 残った5つのエッジと2つのコーナーを揃える
  4. 最後の3つのコーナーをコミューテータで揃える

もしあなたが熟練者のアドバイスを無視して、一つの解法だけを使ってFMCをやりたいというなら、Heiseを選ぶのがよいでしょう。この解法を一直線8に使うだけでも平均して40手以下で解くことができるでしょう。非常に極端な解法ですが、同時に極めて効率的です。

最初の二つのステップは奇妙ですが、F2L-1 9 を作り、全てのエッジの向きを揃えるのに効率的なやり方です。「何も制限するな」「様々な状況を活用せよ」というコンセプトに完全に沿っており、ブロックを考えうる最高の方法で作ることができます。

三つ目のステップは複雑ですが、F2Lを完成させてLast Layerのアルゴリズムをやるよりずっと効率的です。これを練習することで、すでにたくさんのブロックが作られて動きが制限されているときでも、ブロックを作って動かすことができる能力が得られるでしょう。(これはこのステップは非常に難しい理由でもあります)

最後のステップではコミューテータを使います。FMCにおいては、インサーションが使えるようになるということです。(コミューテータとインサーションについては、次の章で説明します)

Heise method’s page on Ryan Heise’s website: http://www.ryanheise.com/cube/heise_method.html

1.7 何をどうやって学ぶか

当たり前のことですが、ここに書いたすべての解法を覚えて速くなることはゴールではありません。スピード解法でキューブを解くことはいくらか助けになることもありますし、楽しいものです。しかし、ここではスピードは気にしません。ゴールはできるだけ短い手順でキューブを解くことですから、効率的になるよう努めましょう。
Color Neutral (CN)10であることも大切なことですし、「不一致ブロック(Non Matching Blocks)」(疑似ブロック (Pseudo-block)11について取り組むのも役に立つでしょう。

しかし、スピード解法と最少手数競技用の解法の大きな違いは、FMCではいくつもの異なる可能性を試すことができるということです。たとえばPetrusにおいては、2x2x3ブロックを作ったあとに6つの悪いエッジ(Bad edge)が残ったとき、最初から別のブロックを作り始めるか、ブロックの作り方を少し変えて状況を改善させるかすることができます。12

それぞれの解法について少しだけアドバイスを書きます。

1.7.1 Petrus

  • 2x2x2ブロックの完成後、拡張する方向は3通りあります。全ての場合を考えましょう!
  • 2x2x2ブロックを作ってからやるよりも、2x2x3ブロックを直接作ってしまいましょう
  • ステップ4では「不一致ブロック」を作ってみましょう
  • ステップ4ではLast Layerをうまく変化させて簡単なケースを引きましょう(Heise Styleのラッキーケースでもよい)

1.7.2 Roux

  • 二つのブロックを同時に作ってみましょう
  • 不一致ブロックを作ってみましょう
  • SBを作るときにCMLLへの影響を考慮してみましょう。そして、CMLLのLSEへの影響を考慮してみましょう

1.7.3 ZZ

  • エッジの向き(EO)を揃えたあと、「直線(Line)」を作らないほうがよいです。EOを壊さないように、直接ブロックビルディングをしましょう。直線を最初に作ること(ラインファースト)と左右のブロックを作ることの違いは、CFOPでクロス+F2LをやることとFreeFOPの違いと同じものです。
  • エッジの向きを揃えたら、R、L、U、Dだけでキューブを揃えられる状態になったということです。F2Lをどんな向きからでもやることができます。
  • PetrusやRouxと同じように、不一致ブロックを作ってみましょう。また、F2Lの途中ででLast Layerへの影響を考慮してみましょう。

1.7.4 CFOP/FreeFOP

  • 定義によって、少なくともCFOPはFreeFOPの特殊なケースですから、FreeFOPはCFOPよりよいものです。 少なくともXCross13を作ってみましょう
  • 「4つのエッジが反転したケース」を避けつつ、Last Layerのエッジの向きに影響を与えてみましょう。いくつかのZBF2Lアルゴリズム14が役に立ちますが、これを暗記する前にどういう仕組みで機能しているのかを学びましょう。
  • 最適なペアのインサーションアルゴリズムはあまり知られていません。これを研究しましょう。繰り返しますが、単に学ぶよりも仕組みを理解してみましょう。
  • 「マルチスロット」を試してみましょう。これは複数のペアを同時に入れるということです。最も簡単なケースは、D面のムーブをセットアップとして使う場合です。(例:D R U R' D')このテクニックのアルゴリズムはオンラインで閲覧できますが、「自由に」やってみることをおすすめします。たとえば、次のソルブ例で私が二つ目、三つ目、四つ目のペアをどのようにインサートしたかをご覧ください。: https://www. speedsolving.com/forum/threads/the-3x3x3-example-solve-thread.14345/page-238#post-1013053

    Next: D2 F2 U’ B2 D’ B2 D2 F2 L2 F2 U’ B’ D2 R2 B2 R’ D’ B L2 F R

    こちらをどうぞ、CFOPers!

    x2
    B2 D2 B’ D’ M D’
    R F U F’ R’
    U R2 B’ R’ U R’ U2 R U2 R’ U B
    R U Lw’ D’ R D B’ D’ R’ D
    R2 B E B2 E’ B R2

第2章 ソルブの進め方

Per Kristen Fredlund15の言葉を引用すれば、一般的な進め方は次の通りです。

もっと次のように考えましょう。キューブを二段階で解くのだ、と。

一段階目では、可能な限り多くのピースを、可能な限り効率的に解きましょう。(つまり、よいスケルトン16を作りましょう)
二段階目では、未完成のピースを正しく直しましょう。多くの場合、スケルトンにインサートをするアルゴリズム17を使います。18

これは一般的なアプローチですが、常にこうする必要はありません。たとえば、F2LでブロックビルディングをしてLast Layerアルゴリズムをやるだけで、とても短い解答を見つけることも時にはあるでしょう。これとは違うやり方もあり、そのうち二つは第四章で解説します。

この記述があまりにも一般的すぎるように見えても、これ以外に書きようがないのです。(FMCで)常によい記録を出すような標準的な解法はありません。チャンスを逃さないためには、いつでも可能な限り多くの戦略を試してみるしかありません。

ここではFMCで用いられる基本的なテクニックをいくつか記載します。前の章で書かれた解法を練習しているなら、すでにいくつかは学んだことがあるでしょう。他の解法も学ばなければならないかもしれません。いくつかは詳細に解説しますが、単にさらなる学習のためのチュートリアルへのリンクを書くだけで留めるものもあります。

2.1 ブロックビルディング (Blockbuilding)

ブロックビルディングはFMCにおける最重要のテクニックでしょう。簡単なコンセプトですが、しっかり習得するにはたくさんの練習が必要です。前の章で書いたような、ブロックビルディングの考え方に基づく解法(Petrus、Roux、Heise、ZZ)を練習することで直接的にブロックビルディングのスキルを高めることができます。

ここではいくつか便利な基本となるテクニックを並べましょう。一つ目はRyan Heiseのウェブサイト (www.ryanheise.com/cube)から取ってきたものです。ウェブサイトには実例がたくさんありますから、是非見てみましょう!

2.1.1 並べて、つなげる(Align then Join)

ソース:http://www.ryanheise.com/cube/align_join.html

基本テクニック:コーナーとエッジのペア(最も簡単なブロック)を作るためには、まず整列(align)して、一手でつなげられるようにしなければなりません。

この考え方は、さらに一般的には、より大きなブロックを作るときにも適用できます。たとえば、コーナーとエッジのペアと、2x2x1の四角を合わせて3x2x1ブロックを作りたいときです。

こういう言い方をすると平凡なことを言っているように見えますが、重要なことは二つのピースがいつ整列しているかを認識して、一手でつなげることです。 こうすることで、あるムーブによって2つのピースをつなげることができるかどうかを将来的に判断できるようになります。

並べて、つなげる(Align then Join) - Example

スクランブル: F U' D2 L D L2 D F R2 B U2 R2 D L2 D L2 D R2 U' L2 F2
L2 //Align
U2 //Join
ソリューション: alg.cubing.net

上記の例では、二つのペアがすでにできています。L2 U2と回すことで青-赤エッジと青-赤-黄コーナーがペアになります。

訳注:L2と回すことで青-赤エッジがB面の青センターと合うことを、ここでは整列(align)すると言っています。日本語では「センター合わせ」「エッジセンターペアに合わせる」と言うこともあります。

2.1.2 別のところに持っていく (Move it out of the way)

ソース: http://www.ryanheise.com/cube/move_it_out_of_the_way.html

ブロックを作りたいけれど、そのために必要なムーブが別のブロックを壊してしまうということがあるでしょう。そうしないために、動かしたくないピースをあらかじめ別の場所に動かしておきましょう。一つの方法として、まず壊したくないピースを先に動かして、壊れないように保存しておいてから、(必要なら)あとで戻すことができます。

別のところに持っていく (Move it out of the way) - Example

スクランブル: F R2 B D2 F D2 L2 B2 F' D2 F' L B U' F2 U2 L2 U B R2 F
U2 R2 D R2 //2x2x1の四角ができる
U' //赤-白-青のペアを別のところに持っていく
F' D' //四角を拡張して2x2x2を作る
ソリューション: alg.cubing.net

もし2x2x1ブロックを作ったあとすぐにF' D'と回したとしても、同じ2x2x2ブロックを作ることができます。しかし、赤-白-青のペア壊してしまうことになります。ただし、このケースでは「別のところに持っていく」は最高のアイディアではないかもしれない、と補足しておきます。赤-白-青のペアを保存する過程で、黄-橙-青ペアを壊してしまっています!

2.1.3 壊して元通りにする (Destroy and Restore)

ソース: http://www.ryanheise.com/cube/destroy_restore.html

この問題を解決するための別のアプローチとは、一時的にブロックを壊してから、あとで元通りつなげるというものです。同様に「別のところに持っていく」テクニックを使います。

基本的な例として、R U R' Uの「スクランブル」をした状態を考えましょう。

U R U' R'という手順で元に戻りますが、これを知らないふりをして、Last Layerの状態も無視してください。最初の二段目だけを見ると、R'することで既にできたペアをF面にある別のピースの隣に動かせることがわかります。しかし、既に完成している別のF2Lスロットを壊してしまいます。このとき、次のように「壊して元通りにする」ことができます。

壊して元通りにする (Destroy and Restore) - Example

スクランブル: R U R' U'
R' //既にできているペアを「壊す」
F //「別の所に持っていく」
R //「元通りにする」
F' //Fをして動かしたピースを戻す

2.1.4 キーホール (Keyhole)

単独の解法として既に書いたことですが、キーホールはブロックを作るための戦略のひとつとして考えることができます。このテクニックの本質は未完成であるキューブの一部を活用してほかのピースを揃えることです。キーホールF2Lの練習をうまくやっていれば、私が言わんとしていることを理解するのに実例を出す必要はないでしょうけれど、念のためにキーホールの例を書いておきます。

キーホール - Example (出典:Edoardo Disarò)

スクランブル: R U' R' L F' B U2 R2 B2 L' B R D F2 D2 L2 F2 D' R2 F2
F' L' //コーナーが一つない一面が完成
F2 L' B' L //キーホール
F U' B U //キーホール、偶然にも最後のコーナーが揃う
F' R' B2 R //キーホール
F B L B L' //F2L
B' //LL
ソリューション: alg.cubing.net

2.1.5 一つのムーブ、二つのゴール (One Move, Two Goals)

一つのムーブで二つのブロックを作ることができる場合は多くあります。一般的には「二つのことを同時にやる」ことができます。実例を見ることでよりはっきりとわかるでしょう。

Example (by Mirek Goljan and Guus Razoux-Schultz)

スクランブル: D U' F2 U' R' F R2 B D' B R F B' U R' D2 L' R2 F2 B' U' B D B2 F2 U L F U' B2
L U' F2 D' //2x2x2 (4/4)
U2 B R2 B //疑似F2L-1 (4/8)
F' * U F R U2 R' //疑似F2L (6/14)
U2 R2 //3コーナー以外完成 (2/16)
* = B' U F2 U' B U F2 U' //Last 3 corners (3/19)

19

もしあなたがインサーションについてまだ知らないなら、最後の行は無視してください。今回注目すべきは最初の行、特にF2をしているところです。この一手でDFに2x2x1ブロックを作り、同時に橙-緑エッジを合わせています。次の一手で2x2x2ブロックができるようになりました。

このような状況は偶然に生まれることがありますが、そうでない場合でも認識の仕方を学んでおくことは役に立ちます。

2.1.6 あとのステップに影響を与える(Influence Later Steps)

F2Lを完成させるときにLLに影響を与える点についてはすでに(少しだけ)話しました20。このアイディアはブロックビルディングにも適用できます。つまり、ブロックを準最適(sub-optimally)21に作っておくか、あるいは「不要な」ムーブを加えることで後の繋がりをよくしたり、よいブロックビルディングができたりします。

たとえば、次のスクランブルを考えてみましょう。

あとのステップに影響を与える - Example

スクランブル: L2 D2 U R2 F2 D2 B2 U' R2 B2 U B U F D B2 U L D' R' F
L2 B R B //2つの 2x2x1 ブロック
ソリューション: alg.cubing.net

見てわかるように、L2 R Bで赤-青-白の四角を作ることができますが、L2 B R Bと一手加えることで、四角が二つになります。

2.1.7 EOに気をつけよう (Pay Attention to EO)

ここでいうEOとはエッジの向き(Edge Orientation)を略したものです。

複数の異なる解法を学ぶなかで既にお気づきの方もいるかもしれませんが、Edge Orientationというのは再帰的なステップなのです。前述のように、Bad edgeが多ければ多いほど、解くのは困難になっていきます。通常、最後にエッジの向きをそろえることは、効率的ではありません。ZZでそうするように、まず最初にエッジの向きを揃えることが手軽ですが、ブロックビルディングのフェイズで制約を持つことになります。

部分的にでも、Edge Orientationをブロックビルディングの途中で終わらせるのが良い方法です。ZZやPetrusなどの解法に習熟すると、数手動かしたあとでエッジの向きが正しいかどうかを簡単に判定できるようになります。もしまだ判定ができないのなら、FMCにおいてはいつでも望むときに戻って修正できるということを忘れないでおきましょう。つまり、EOがうまくいかないときには、前に戻って、何手か加えたり変えたりして、よい方向に進むかどうかを確認すればいいのです。(2.5.1節もご参照ください)

しかし、「EOファースト・アプローチ」をただちに却下しないようにしてください。João Pedro Batista Ribeiro Costa(世界大会2015のFMCチャンピオン)やGrzegorz Łuczyna(ヨーロッパ大会2010のFMCチャンピオン)などの著名なキューバーは、ほとんど常にEOから始めていますし、Sébastien Auroux(世界大会2011のFMCチャンピオン)や私(Sebastiano Tronto)も非常によく使います。詳細と実例については4.1節を参照してください。

2.1.8 どのブロックを作るべきか? (Which Block Should I Build?)

様々な状況を活用せよ、ということが黄金律です。つまり、2x2x2ブロック、3x2x1ブロック、2つの2x2x1の四角、ほかの様々なブロックから始めることができます。全ての可能性を試しましょう。

可能な2つのアプローチとしては次のようなものがあります。

  1. 2x2x3やF2L-1のような大きなブロックを作ろうとする
  2. 小さなステップで前に進み、たくさんの小さなブロックを作って最後につなげる

Erik Jernqvistは「よいスタート」を切るための指標として、次の手数の表を作りました。22

ブロックの種類 手数
2x2x1四角+コーナー/エッジペア 3
2x2x2ブロック 4
2つの2x2x1四角 5
2x2x3ブロック 9
F2L-1 14
F2L 17

個人的には、この表の手数はちょうどよい推計だと思います。特に最初の3つについて当てはまります。しかし、よいスタートを切れたかどうかはその後のつながりがどうなるかにかかっているということを覚えておかなければなりません。もしF2L-1が12手でできたけれど、bad edgeが4つも残っていて、最後のF2Lのエッジが反転して入っているとしたらどうするでしょう。すぐに投げ捨てるだろうと思います。一方で、全てのエッジの向きが揃った2x2x3ブロックが12手でできたならもっとよいでしょう。もちろんEOだけが考慮すべきことではありませんが、最も重要なものの一つです。

もう一つのルールは決してLast Layerに影響を与えずにF2Lを完成させてはならない23ということです。理由は単純です。つまり、Last layerが悪い状態であるなら、どんなに多くのアルゴリズムを知っていたとしても多くの手数が必要になります。また、F2Lを完成させてしまうことはキューブ全体を操作する自由度が減るということです。一方で、F2L-1を目指すことは良い部分解です。これは、多くのピースが既に配置されているにも関わらず、より多くの自由度があるからです。

2.1.9 既にブロックがある:どうすればいいか?(Ready-Made Blocks: How to Deal with Them?)

キューブをスクランブルしたときに既にいくつかブロックができていたり、最初の何手かで意図せず新しいブロック(コーナーとエッジのペアなど)ができてしまったりすることがあります。こういうときは、元々考えていたやりかたを続けるよりも、できてしまったブロックを活用するのが望ましいです。どうやって?3つの方法があります。

  1. まず既にできているブロックを拡張する (当たり前のことです)
  2. 既にできているブロックを拡張するが、他のピースも同時に見ながら同時に別のブロックができるようにする。(これが最良の方法です)
  3. 既にできているブロックを拡張せず、できればそれを壊さずに新しいブロックを探す。

さらに言うなら、保存する価値があるブロックなのかを理解することはとても重要で難しいことです。新しいブロックを作るためには既存のブロックを壊す必要があります。個人的には、ブロックを「諦めて」「捨てる」ことはとても難しく、同時にトラブルのもとになります。タイムマネジメントをする上ではなおさらです。

2.1.10 速くなるためのコツ、高度なテクニック(Tricks to Get Fast and Advanced Techniques)

「速くなること」はスピード解法のような意味ではなく、「よいブロックビルディングを速くやること」という意味です。よいスタートを速く見つけることはとても重要です。そうすることで時間が節約できます(1時間はそんなに長くありません!)し、全ての将来有望なスタート地点を探して見つけるべきです。見つけられないにしても、気付くべきです。

最も簡単なブロックはコーナー/エッジのペア(2x1x1ブロック)です。スクランブル後に何も動かさなくても、一つできていることもあるでしょう。もし一つでも(二つ以上でも)あったなら、2.1.9節で書いたように、これをうまく使ってもよいでしょう。もし一つもなかったとしたら、見えるところにあるもので一手でペアになるものを認識できるようにしましょう(2.1.1節を参照)。もしまだすぐにわからなくて、楽をしようとするなら24、「総当たり戦略」をやってみるのもよいでしょう。つまり、すべての可能なムーブ試すのです。UU2U'と順番に試してから、次にRR2R'と続けていき、ペアができたかどうかを確認すればいいのです。

もっと高度で役立つテクニックがあります。検討する時間はかかりますが、全ての可能な2x2x2ブロック(8通り)をチェックするとよいでしょう。やり方はこうです。全てのコーナーについて、3つの一致するエッジを探して、どうすればつなげて2x2x2ブロックが作れるかを考えます。実際に動かして「テスト」しないようにすることで、再度スクランブルせずに他のコーナーについても同じことを繰り返すことができます。通常、非常に悪い2x2x2ブロック(とてもたくさんの手数がかかる)を見つけたとき、私はそれを無視して次に進みます。このテクニックを使うことで、全てのピースがキューブのどこに位置しているかということがわかり、さらに最適な2x2x2ブロック(これはよいスタートになることが多い)を見つけられるようになるでしょう。

実際にキューブを回さずに2x2x2ブロックを作るムーブを考えることは他にもよい意味があります。より速く上手にブロックビルディングできるようになるためには、実際の動きを見ずにピースの動きを「計算できる」ようになる25ことが大切です。
Alexander Lau (2014 年のヨーロッパチャンピオンであり、Rouxメソッドの達人)は15秒間のインスペクションタイムで3x2x1ブロック(Rouxの最初のステップ)を読むことができます。この読みは非常に正確で、ブロックを作りながら先読み(look-ahead)をして、Second Block(の一部)を読むことができるようです。

この先を読む能力は次のようなゲームでトレーニングすることができます。
友人にキューブを3手26でスクランブルしてもらって、3手の解答を探しましょう。(これは簡単なはずです)次に、4手をやってみる、という風に続けます。あなたのレベルによりますが、6手、7手、8手と行くにつれて難しく感じていくでしょう。9手や10手のものを苦労なくできるようになりましたか?おめでとうございます!

訳注:
この「詰めキューブ」問題は非常に難しいので、9手や10手のものが苦労なくできるというのはかなりのレベルです!Sebastiano Trontoにとっては簡単なのかもしれませんが…。
日本国内では、うえしゅう氏による詰めキューブ生成のサービスがあり、3手から14手までの詰めキューブの問題をランダム生成して楽しむことができます。自分で面白い詰めキューブの問題ができたら、詰めキューブスクランブル生成器でスクランブルを生成して、知り合いのキューバーに問題を出してみましょう!

2.2 よいスケルトンを見つけよう(Find a Good Skeleton)

F2L-1など、ブロックビルディングがうまくいきそうなところまで到達したなら、上に書いたようなテクニックを使って進めるのは難しくなるでしょう。次なるゴールは「スケルトン」と呼ばれるものを見つけることです。つまり、いくつかのピースが未完成な状態のままの、部分的な解法のことです。最も良いのは、3つのコーナーだけ残って3-cycle27で交換できる状態ですが、4つや5つのコーナー、3つのエッジが残る場合も悪くありません。スケルトンを作るのに何手かかったかによります。

次にやることは何でしょう。これまで見てきたブロックビルディングのテクニックを、既に作ったブロックを壊さずに使うことができるでしょうか?まずHeiseを見てみるのがよいでしょう。これはHeiseメソッドのステップ3という意味でもありますし、彼のウェブサイトという意味でもあります。特にウェブサイトの「2つのペアによるアプローチ」に記述があります。http://www.ryanheise.com/cube/two_pairs.html

Heiseのステップ3はF2L-1だけでなく、全てのエッジの向きが揃っていることを仮定しています。もし揃っていないなら、次のようなやり方があります。

  1. まずエッジの向きを揃える。手数が非常に少なくない限り、非推奨。
  2. 既にやった手順を修正して、全てのエッジの向きが最後に揃うようにする。
  3. スケルトンを完成させるときにエッジの向きを揃える。

まとめると、よいスケルトンを作るための可能なアプローチはたくさんあます。この場合の最も良い方法(であり、よい習慣でもあるもの)は、オンラインでFMC熟練者のソルブ例を見ることです。ほとんどの場合、スケルトンを作って解いています。たとえばオンライン大会やspeedsolving.comのフォーラムで見ることができます。

さらに深く考える練習も役に立つでしょう。qqTimer (http://www.qqtimer.net/)では3x3x3のスクランブルのサブセットとして、last slotとlast layerを選ぶことができます。

当たり前のことですが、スケルトンを完成させる前にF2L-1を作らなくてもよいですが、これが最も簡単であることが多いです。どんなケースでも、偶然にLast layerのピースで小さなブロック(ペア、2x2x1など)ができたなら、残しておきましょう。

2.3. コミューテータ(COMMUTATORS)

speedsolving.comの定義28によれば、コミューテータとは次のような形で記述する手順です。

A B A' B'

ABはそれぞれ手順を示す配列で、X'Xという手順の逆手順(inverse)29です。このようなコミューテータは次のような記法で短く書くことができます。

[A, B]

コミューテータの名称や記法は数学、特に群論から来たものです。たとえばWikipediaの記事をご覧ください。https://en.wikipedia.org/wiki/Commutator

訳注:
数学用語としてのコミューテータは、日本語では交換子(こうかんし)と書かれます。しかし、キューブ用語としてはコミューテータあるいはコミューテーターとして定着しているため、ここではカタカナで記載します。
詳しくは「交換子 - Wikipedia」をご参照ください。

たとえばA=R、B=Uであると考えると、「セクシームーブ(sexy move)」がコミューテータであることに気づくでしょう。

[R, U] = R U R' U'

A=R、B=U' L' Uと考えると、「Niklas」手順になります。

[R, U' L' U] = R U' L' U R' U' L U

慣習として、「コミューテータ」は「3点の巡回交換(3-cycle)を解くコミューテータ」として使われることが多いです。なので、たとえば「セクシームーブ」は通常コミューテータとみなされませんが、「Niklas」はコミューテータとみなされます。この先も、この慣習に従って使っていきます。

「コミューテータとは何か」という点については、WRCCやTRCCのFMC解説記事のなかにわかりやすく記述されています。簡単に言うと、FMCにおいては任意の3点だけを8手で自由に入れ替えることができる手順のことです。これが8手では実現できない場合もあります。詳細は下記の記事を参照してください。
FMC解説 - 7. Commutator (WRCC)
4. ピュア・コミュテーター - 東京大学ルービックキューブサークル

2.3.1 コーナーコミューテータ(Corner Commutators)

コーナーコミューテータはFMCにおいて最も役に立つコミューテータです。既に「Niklas」というコミューテータを見ました。PLLのA permであるR2 B2 R F R' B2 R F' Rという手順も、(ほぼ)コミューテータです。

R2 B2 R F R' B2 R F' R = R2 [B2, R F R'] R2

ここではR' R2という配列がキャンセル28してRになっています。

組み合わせが変わる3つのコーナーは同じ面にある必要はありません。[L D' L', U2] = L D' L' U2 L D L' U2 という手順も3-cycleです!

全ての種類のコーナーコミューテータ(このチュートリアルでは解説しません)を学ぶなら、Speedsolving.comのBrian Yuのチュートリアルを見てみるとよいでしょう。文書と動画で解説されていますが、どちらも非常によくできています。

FMCをやる上では、8手の「ピュアコミューテータ」だけを覚えればいいでしょう。たとえば、Niklasはピュアコミューテータですが、A permは違います。必要ならA9やほかのケースを見てください。しかし、インサーションのところでも話しますが、FMCにおいてはほとんど必要がありません30

訳注:
上記のBrian Yuのチュートリアルにおいては、コミューテータの種類として次のものを上げています。8手のものがピュアコミューテータです。ここでは、A9(9手コミューテータ)以上のコミューテータを覚えても、FMCではあまり使わない、ということを言っています
Pure (8 moves)
A9 (9 moves)
Orthogonal (10 moves)
Cyclic Shift (10 moves)
Columns (11 moves)
Per Special (12 moves)

訳注:
「ピュアコミューテータ以外はFMCにおいてはほとんど必要ない」ことの例外として、Tomoaki Okayama (岡山友昭)による実例が脚注に上げられています。ここではF2 (R F' L2 F R' F' L2 F) F2という、F2セットアップして1手キャンセルする9手のインサーションをしていますが、8手のピュアコミューテータによるインサーションがまったく見つからないという状況が議論されています。

2.3.2 エッジコミューテータ(Edge Commutators)

コーナーコミューテータを学んだら、エッジコミューテータの仕組みを理解するのも難しくないでしょう。たとえば次の例を見てみましょう。

[U R U', M'] = U R U' M' U R' U' M

残念ながら、上記のようなコミューテータがよい結果につながるのはごく稀です。その理由はM列を使うので、2手として数えられてしまうからです。

全ての人が知っておくべきエッジコミューテータは

[M', U2] = M' U2 M U2 (DF->UB->UF)

です。これはセットアップすることでとても役立ちます。たとえば、次のような形です。

[U: [M', U2]]31 = U M' U2 M U2 U' = U M' U2 M U

公式大会においては中層回転(スライスムーブ)を書くことはできませんから、[M', U2]のコミューテータは次のように書きます。

M' U2 M U2 = R' L x U2 R L' x' U2 = R' L F2 R L' U2

最初のR' Lというムーブは交換可能であることがわかると思います。このことは全ての並行な(つまり対面にある)ムーブについて言えます。

もう一つ知っておかなければならないのは、最初の2手は交換したい3つのエッジにまったく影響を及ぼさないということです。なので、R' L F2 R L' U2L F2 R L' U2 R'F2 R L' U2 R' LR' F2 R L' U2 Lと等しいのです。

訳注: [M', U2]はDF->UB->UFの3点を交換するコミューテータです。

このことは特にキャンセルを探しているときに役に立ちます。コミューテータの最初のムーブと、後続のムーブの逆手順とを対応させることでキャンセルが起きます(あるいはその逆もあります)。一般的にはコミューテータでなくともこのような探索を使うことができます。

2.3.3 その他のエッジ3-cycle(Other Edge 3-cycles)

中層回転を使わないエッジの3-cycleもあります。実際にはコミューテータですらないものも含まれます!HTMで8手の例を2つ上げましょう。

R2 Fw2 R2 U R2 Fw2 R2 U = R2 B2 L2 D L2 B2 R2 U
R2 Fw2 R2 Uw R2 Fw2 R2 Uw = R2 B2 L2 U B2 R2 F2 D

訳注: 一つ目も二つ目もDF->UF->ULを交換する三点交換です。途中のUUwに変わっただけです。

一つ目の最初の2手は交換したい3つのエッジにまったく影響しません。なので、これを先ほどのR' L F2 R L' U2と同じように「シフト」することができます。

しかし、エッジ3-cycleのジャングルはこれよりもさらに複雑なのです。たとえば、次の10手のアルゴリズムをチェックしてみましょう。

U L D R F R' D' L' U' F' (UF->RU->RF)

さらに10手の2-gen 3-cycle32もあります。

U R U R U R' U' R' U' R' (UF->BR->UR)
U R U R U' R' U' R' U' R (UF->BR->DR)
U R U R U2 R' U' R' U' R2 (UF->BR->FR)

訳注:
この節は特に説明が希薄なので、訳注で補足します。
Speedsolving.comの元のスレッドでJanWが言っていることは、次のような[U R U R, X]型と[R U R U, X]の2種類の2-genコミューテータの計6種類を基本手順として、(目隠し解法における)エッジの3-cycleのシステムを作ろうというものです。学ぶべきアルゴリズムの数が非常に少なくなるので効率的なのではないか、という提案です。その後、どの程度使われるようになったかは正確にはわかりません。しかし、3x3x3目隠し競技のトップ層は呼吸をするようにエッジとコーナー合わせて818種類のコミューテータを使いこなす(さらに平気でバッファ移行をする)ような記憶オバケですから、あまり流行らなかったのでしょう。もしかすると、3x3x3片手目隠し競技をやりたい方にとっては2-genであることが役立つかもしれません。
[U R U R, U] (UF->BR->UR)
[U R U R, U'] (UF->BR->DR)
[U R U R, U2] (UF->BR->FR)
[R U R U, R] (UF->UR->BR)
[R U R U, R'] (UF->UL->BR)
[R U R U, R2] (UF->UB->BR)

2.3.4 ブロックコミューテータ(Block Commutators)

Ryan Heiseのウェブサイトを注意深く読んだなら、「ペア3-cycle」あるいは「ブロックコミューテータ」というものについても既にわかっていることでしょう。コーナーコミューテータについて既に知っているなら、これを直感的に理解するのは難しくはありません。たとえば次の例を見てみましょう。

[L Dw' L', U'] = L Dw' L' U' L Dw L' U

これはHeiseのステップ3でとても役立つ手順です。しかしこれは、コーナー3-cycleとエッジ3-cycleを同時に揃えることができます。たとえば、Last layerのアルゴリズムであるM F U F' U' F' L F R'は次のように書くことができます。

[R: [L' Dw L, U']] = R L' Dw L U' L' Dw' L U R'

これはペアコミューテータにセットアップを加えたものです。PLLのJ permも次のようなペア3-cycleとして書くことができます。

[R2: [Fw2, D B2 D']] = R2 Fw2 D B2 D' Fw2 D B2 D' R2

2.4 インサーション(Insertions)

このチュートリアルを通じて何度も触れてきましたが、(ようやく)インサーションについて詳しく見てみましょう。

さて、どうにかしてよいスケルトンを見つけることができたとしましょう。コーナー3-cycleを1回やれば完成するという状態です。ここで何をすればいいでしょうか? もちろんコミューテータを使ってそのまま3点交換をしてもよいでしょう。しかし、全てのケースを学んでいればわかることですが、コーナーコミューテータは最大で12手もかかります。最もいい場合では8手ですから、4手も増えるのはあまりよくありません。ところが、コーナー3-cycleをほとんど確実に8手以内でやる方法があるのです!それがインサーションです。

訳注:ここではInsertionをそのままインサーションと訳しています。日本語の解説記事では「インサート」と書かれることが多いです。単純に訳すなら「挿入」「差し込み」のことです。

2.4.1 単純インサーション(Simple Insertions)

インサーションの背後にある考え方はあまり難しいものではありません。もしあと3つのコーナーを揃えたら完成するような状態であるとき、スケルトン全体を一手ずつ見ていって、対応する8手のコミューテータを回して完成させることができます。コミューテータは対象となるピース以外には影響しませんから、3つのコーナー以外の部分(つまりスケルトン)は元々そうであったように全て完成します。そして、3つのコーナーもインサートされたコミューテータによって揃うのです。

これが3-cycleのコーナーをほとんど常に8手で解く仕組みです。どうすればもっと改善するでしょうか? 3つのコーナーを揃えることができる全てのインサート可能なコミューテータのなかで選ぶべきは、最も多くのキャンセルが起こるものです。通常は、3つのコーナーを揃えるピュアコミューテータをチェックするだけで十分です。そのあとで一番いいものを選びましょう。ごく稀に、一番いいインサーションが9手(あるいはそれ以上)のコミューテータであることがありますが、そういう状況はあまり起こらないので、全ての種類のコミューテータをチェックするのはあまり意味がありません。

スケルトンを作ってから、3つのコーナーの動きを追いかけやすくするため、キューブに白いステッカー33を貼って1、2、3のような番号(あるいはA、B、Cのような文字)34を書いたりすることを進める人が多いです。個人的には、暗めのステッカーがある安いキューブを用意して、その上に鉛筆で書いてしまうのがよいと思います。

ソルブの実例を見るともっとわかりやすくなるでしょう。次のスケルトンを安いキューブで回してみましょう。(もしステッカーを貼るなら、どんなキューブでもよいです)

単純コーナーインサーション - Example (スケルトン)

スクランブル: D B2 U' F2 L2 D2 R2 U F2 U2 L2 R' D2 B L' U' R2 F2 R B F2
B' U' D L' F' //EO + blocks
D2 L2 D' L //疑似 2x2x3
U2 R2 U' R' //疑似 2x2x1
U L' U R' U' L U2 R' L' //3コーナー以外完成
ソリューション: alg.cubing.net

この時点で、鉛筆を持って青-赤-黄コーナーの赤ステッカー(ULB)の上に「1」、青-黄-橙コーナーの橙ステッカー(RDB)に「2」、橙-青-白コーナーの白ステッカー(LDB)に「3」と書きましょう35。キューブを揃えて、またスクランブルしましょう。(たとえばL B2 L F L' B2 L F' L2などで揃います)

スクランブル後、3つのコーナーを最初からすぐに揃えることもできますが、9手かかります。(R2 F R B2 R' F' R B2 R) なので、まずはスケルトンの最初の1手(B')を回してもっとよいケースがないかを探しましょう。さらに次のムーブ(U')36を回すと、ターゲットの3つのコーナーを8手コミューテータで揃えられます!(L2 F R F' L2 F R' F') もしこれを採用したいなら、最終解答は次のようになります。

B' U' L2 F R F' L2 F R' F' D L' F' D2 L2 D' L U2 R2 U' R' U L' U R' U' L U2 R' L'

実際に試してみて、ちゃんと揃うことを確認してみましょう。

何にせよ、もっとうまくやることができます。次のムーブ(D)を回すと9手のコミューテータが必要であることがわかります37。この調子で何手か進んでいくと、やがてL' F' D2までたどりつきます。ここで3つのコーナーを8手(D' F2 D B2 D' F2 D B2)38で揃えてみましょう。しかし、これで終わりではありません。最後の1手とコミューテータの最初でキャンセルがあります!これを採用するなら、次のように書きましょう。

B' U' D L' F' D2 D' F2 D B2 D' F2 D B2 L2 D' L U2 R2 U' R' U L' U R' U' L U2 R' L'

これは次のようにまとめても同じことです。

B' U' D L' F' D F2 D B2 D' F2 D B2 L2 D' L U2 R2 U' R' U L' U R' U' L U2 R' L'

1手少なくなりましたね! 3つのコーナーを7手で揃えることができました。

ちゃんと網羅するために、スケルトンの最後までもっとよいインサーションがないかを探してみましょう。実は、一番いいインサーションは後ろのほうにあります。

B' U' D L' F' D2 L2 D' L U2 R2 U' R' U L' * U R' U' L U2 R' L'
* = L F' L' B L F L' B'

この書き方は、一行目の*と書かれたところを二行目の内容で置き換えるという意味です。最終解答は次のようになります。

B' U' D L' F' D2 L2 D' L U2 R2 U' R' U L' L F' L' B L F L' B' U R' U' L U2 R' L'

明らかにLL'でキャンセルします。なので、

B' U' D L' F' D2 L2 D' L U2 R2 U' R' U F' L' B L F L' B' U R' U' L U2 R' L'

となります。さらに説明を重ねなくても、エッジ3-cycleでのインサーションの探し方はわかることでしょう。同じことを、次のアルゴリズムで揃えられるようなエッジ2-cycleを二回繰り返すことでもできます。

M2 U2 M2 U2
R2 U2 R2 U2 R2 U2
U2 L2 D2 R2 D2 L2

そのほか、バリエーションがあります(シフトしてみてください)39

最後のヒントです。180度のムーブ(U2など)は8手コミューテータの最初や最後にあるのは、それがインターチェンジ(interchange)である場合です。つまり、同じ面にある2点交換をしているということです。この事実がわかっていると時間を節約できます。2手以上のキャンセルを狙っているとき(狙うべきです)、2点交換がない限り、このようなムーブは完全にキャンセルすることはないと推測できます。前後でキャンセルをするようなコミューテータだけを探せばいいでしょう。

2.4.2 複数インサーション:別々のサイクル(3エッジ、3コーナー) (Multiple Insertions: Separated Cycles (3 Edges and 3 Corners))

スケルトンは常に3-cycleだけが残ったものとは限りません。インサーションはもっと多くの(もっと長い)サイクルでも使うことができます。

既に見たように、3-cycle(コーナーとエッジ)が2回あるような場合は、ペアコミューテータ(必要ならセットアップも含めて)で揃えることができます。別のやり方は、「Sune」(R U R' U R U2 R')やその派生を使ってエッジを揃えることです。これによって必要なコーナーだけに影響を与えることができます40。どちらのやり方も頭にとどめておくとよいですが、簡単に使えることはあまりありません。「標準的な」解法は2つのコミューテータをインサートすることです。

コーナーとエッジに番号を振ったあとで41、一手ずつ単純なインサーションを探して進んでいきますが、全ての箇所でコーナーとエッジの解法を見ていきましょう。さらにペアコミューテータとSuneもチェックします。終わったら、2つのインサーションによる最終解答を書くこともできますが、別のやり方を試してみることもできます。たとえば、コーナーコミューテータを残しておきたいけれど、もっといいエッジの交換を探したいとき、コーナーコミューテータだけをインサートした解答をまず作りましょう。ここでできたものが、3つのエッジだけが残り、数手だけ長くなった新しいスケルトンです。 ここからは単純な(エッジ)インサーションで揃えられます。他の方法もあるなかで、こうすべき理由はなんでしょうか? それは、他のコミューテータの手順の中に、エッジコミューテータをインサートするよいポイントが見つかることもあるからです。 逆に、エッジの交換をインサートしてからコーナーのインサーションをやることもできます。

次のソルブが単純な実例です。

別々の交換をインサートする - Example

スクランブル: B2 D' R2 D' F2 R2 D B2 U' L2 D2 R' U' R L' D' F D2 B R U2 R'
B' R' * F2 U F2 //2x2x1 (5/5)
R //もう一つ2x2x1 (1/6)
F R U2 F R B R + B' R //F2L-1 + pair (9/15)
D' B' L B L' //3エッジ3コーナー以外完成 (5/20)
* = U B U' F2 U B' U' F2 //3コーナー, 4手キャンセル(4/24)
+ = R B' F D' B' D B F' R' B //3エッジ, 5手キャンセル(5/29)

2つ以上ある別々の交換が必要なケースについても、全く同じアプローチをすることができますが、もっと複雑になるでしょう。

2.4.3 複数インサーション: 2つあるいは3つのねじれコーナー(Multiple Insertions: 2 or 3 Twisted Corners)

2つのねじれたコーナーが残ったとき、どこかで[F L' D2 L F', U2](12手) というコミューテータを試してみるといいでしょう。3つある場合は、U' B U' F U2 B2 D' R2 U D F' U' B(13 手)も使えます。しかし、特に2つ目については最良ではないことが多いです。

2つあるいは3つのねじれはコーナーを揃える古典的手法は、コーナーコミューテータを2回インサートすることです。 1回目のコミューテータでは、3つのねじれたコーナー(あるいは2つのねじれたコーナーと、それ以外のコーナー)を交換するだけで十分です、通常、多くのキャンセルが見込めます。そこから先は、新しくできたスケルトンに単純なコーナーコミューテータをインサートすればよいだけです。

こうするためには、ねじれたコーナーに「X」などの記号を描いておけばよいだけです。上に書いたような、「純粋に反転させる(pure flip)」アルゴリズムを使いたい場合は、矢印を描いておいて、どの方向(時計回り、反時計回り)に回転させるべきなのかわかるようにしておくといいでしょう。

1つめの交換が見つかったら、描いた記号を消して(単純なインサーションを探すのと同じように)1、2、3と番号を書きましょう。

2つのエッジがねじれているときにも同じことができますが、おすすめしません。エッジコミューテータはもっと手数がかかることが多いからです。

2.4.4 複数インサーション:4つのコーナー(Multiple Insertions: 4 Corners)

唯一の悪いケースである、3回のインサーションが必要な4つのコーナーが残った場合は、コーナーの位置は正しいけれどねじれているという状態です。なるべくなら避けたいですが、もし避けられない(あるいはスケルトンが本当に短い)なら、前の節で書いたような1つ目のインサーションをやって、4つのコーナーがよい配置になるようにしてもいいでしょう。この状況に関しては、speedsolving.comによいディスカッションがあります42

その他に次の3つのケースがあります。

  1. 1つのコーナーの場所はあっているがねじれている。他の3つのコーナーは「ねじれた3点交換」になっている。つまり、向きを考えずに位置だけを考えた3点交換。
  2. 2つのコーナーのペアが違いに入れ替わっており、向きが合っている。(2回のスワップ、あるいは回の2点交換)
    後で話をするやり方でも解けますし、コーナーの2回スワップをエッジの2回スワップに組み替えることでも解けます。たとえば、H perm (M2 U M2 U2 M2 U M2)に1手(U2)加えることで、コーナーの位置合わせに変えられることがわかるでしょう。(R U R' U') x 3 (トリプルセクシー)や(R' F R F') x 3(トリプルスレッジ)のようなアルゴリズムでも2つのコーナーペアをスワップできます。
  3. ねじれたコーナーの2回スワップ

これらのケースは全て2回のコミュテータで揃えらえます。 1回目で4つのコーナーのうち1つを揃えて、他の3つのコーナーに適当な影響を与えましょう。そして、1回目のインサーションで新しいスケルトンができますから、2回目では残った3つのコーナーを揃えればいいのです。

この1回目のインサーションについて、1つめのケース(場所はあっているがねじれている)ではもう一つ制限があり、「場所は合っているけれどねじれている」コーナーを1回目のコミューテータに含めなければなりません。 含めないと、2つあるいは3つのねじれたコーナーがある状態が残り、さらに2回インサートしなければならなくなります。

これを間違いなくやるために、私は次のようにコーナーに印をつけます。

  1. ねじれたコーナーに「X」と印をつけます。ねじれている向きは気にしません。そして、他の3つのコーナーに1から3までの番号を振ります。このとき、ねじれた交換なので、1は2になり、2は3になりますが、3は1ではなく同じコーナーの別のステッカー43になります。これは大したことではなく、その別のステッカーに4と番号を振れば大丈夫です。
  2. 最初のコーナーのペアにXと印をつけて、次のコーナーのペアにAと印をつける。
  3. ねじれた3点交換には4つの番号を振る必要があり、ねじれた2点交換には3つの番号を振る必要があるので、2点交換には1から3までの番号を、それ以外にはAからCを振る。

たとえば、1つ目のケースでは、可能な「最初のサイクル」はXを3に、3を4に、4をXに、というものがあります。1->2->3->1というのはよいサイクルではなく、3点交換ではなく2つのねじれたコーナーが残ってしまいます。

素晴らしい例は次のソルブです。これは、João Pedro Batista Ribeiro Costaの南アフリカ記録のものです。解答の説明は私が少し修正しました。元々のものはプリムーブ(premove)を使っていました。プリムーブ(premove)については、次の章で説明します。

João Pedro Batista Ribeiro Costaの元南アフリカ記録(SAR)

スクランブル: L' U2 D' L' U2 B' D B' L U2 F2 R2 F' R2 L2 F' U2 D2 F
F D' + U2 * R //EO
D' F' L2 //疑似 2x2x2
F2 D F2 //疑似 F2L-2
B' D B //疑似 F2L-1
F' D' F' L2 //4コーナー以外完成
* = U R D' R' U' R D R' //1つ目のコミューテータ
+ = L' U' R' U L U' R U //2つ目のコミューテータ

もう少しコメントを追加しましょう。最初ほうにインサートされたコミューテータ(2つ目のコミューテータ、+)は後で見つけられたものです。2つ目のコミューテータのほうが早い段階でインサートされています。これでもまったく問題ありません!

さらに、2つのコミューテータの間でお互いに何手かキャンセルをしています。

2.4.5 複数インサーション: 5つのコーナー (Multiple Insertions: 5 Corners)

5つのコーナーが残ったケースの中で、2回のコミューテータだけで揃えられるのはピースが5点交換になっている場合のみです。それ以外のケースでは、3回のコミューテータが必要です。ただし、5つのコーナーの配置は合っているがねじれているという場合には、4回必要となります。ここでは、3回以上のコミューテータが必要なケースについては触れず、最初のケースについてだけ見てみることにします。(3回のインサーションをやってみたいときもあるでしょうけれど)

さて、こういうときに最も簡単でよく使われる手法は、4つのコーナーのとき同様に、2段階で解くことです。コーナーに1から5までの番号を振ったあと、スケルトンを最初から1手ずつ追いかけていき、3つのつながったコーナーの交換を揃えられるコミューテータがないかを探していくわけです。このサイクルは、たとえば次のようなパタンがあります。

1 → 2 → 3 → 1
2 → 3 → 4 → 2
3 → 4 → 5 → 3
4 → 5 → 1 → 4
5 → 1 → 2 → 5

当然、単にコーナーの交換をひとつだけ探すよりも時間がかかります。ここでも変わらずピュアコミューテータを探すだけで十分です。いいコミューテータが見つかるたびに、どこかにメモしておきましょう。

この1段階目が終わった時点で、見つかったコミューテータのなかから一番いいもの(一番多くキャンセルするもの)を選びましょう。次にそのコミューテータをインサートして、コーナーの3点交換だけが残った新しいスケルトンを得ます。ここからどうすればいいかはわかるでしょう。

一番いいものは一つではないこともあります。たとえば、3手キャンセルするコミューテータを2つ見つけることもあるでしょう。では、どちらを選べばいいでしょうか? 時間がないときには、適当に決めてしまいましょう。時間に余裕があるなら、両方のインサーションを試してみて、2つ目のコミューテータがよくなるものを選びましょう。

この手法を使うとき、最適な解答が見けられたかどうか、確信も持つことはできないでしょう。なので、安全を取って、1段階目で見つかった全てのコミューテータ(あるいはそのほとんど)をチェックして、2段階目をたくさん(ほとんど意味のないものも)試してみるといいでしょう。通常、これはとても時間の無駄になりますし、よい解答になることは滅多にありません。解答をもっとよくできるかどうかわからないときは、基準として5つのコーナーの交換を10手か11手で揃えられれば満足できる結果だ、ということを覚えておきましょう。

仕組みを理解するには、置換理論(permutation theory)が少し必要です。心配しないでください、本当に重要なところだけに絞ります44

まずは、置換の標準的な記法にしたがって、ここでの交換を次のように書きます。

(1 2 3 4 5)

これはコーナー1はコーナー2になり、2は3になり…5は1になる、ということを表しています。この記法を使うとき、この交換は(2 3 4 5 1)(3 4 5 1 2)などと等価です。3点交換(a b c)を書くうえで、3つの数字は1 2 3 4 5 1 2と連続しているというルールを使いましょう。

ここでやりたいことは、5点交換を2つの3点交換に分けることです。たとえば

(1 2 3) (3 4 5)

のように書きます。

しかし、上に示した分解は間違いです。理由を知りたい方は、脚注に書いたいくつかのspeedsolving.comの投稿を読んでみてください。あるいは、もっと実用的なアプローチをしたいのであれば、実際にやってみてください!(うまくいきません!)

重要なことは、正しい分解(の例)は次のようになるということです。

(1 2 3) (4 5 1)
(2 3 4) (5 1 2)
(3 4 5) (1 2 3)
(4 5 1) (2 3 4)
(5 1 2) (3 4 5)

つまり、1つ目の交換の最初の数字は、2つ目の交換の最後の数値と同じでなければなりません。

順序が大切であることも忘れないようにしてください。見てわかるように、(1 2 3)は、後に(4 5 1)が来るか、前に(3 4 5)が来るかしかありません。これはどういうことかというと、たとえば、(1 2 3)を揃えるいいコミューテータを見つけたなら、(4 5 1)を揃えるコミューテータをその後のどこかで使うか、(3 4 5)を揃えるコミューテータをその前のどこかで使うか、選ばなければならない、ということです。ここに挙げた交換の組について、同じようにやることができます。

この手法は他のものより速くできますが、「別のインサーションの中にインサートする」ことはできません。 そのため、時間がない時にだけ使うか、予備的な分析としてやるといいでしょう。つまり、こうやると何手くらいかかるのかを確認して、2段階目でいい結果になるコミューテータだけをチェックするというやり方です。

2.4.6 複数インサーション: 5つのエッジ(Multiple Insertions: 5 Edges)

通常、5点交換の場合でもエッジのケースは避けることが望ましいです。それでもやるなら、コーナーについて説明したのと同じ手法を使うこともできます。しかし、非常に少ない手数で揃えられるケースが一つあります。5点交換を6手でやるときに

M' U M U'

が使えます。セットアップが何手かかかる場合でも、非常にいいでしょう。どんなケースで使えるのか、派生はどんなものがあるか、調べてみるといいでしょう。これをシフトしたL F L' R U' R'というものもあります。エッジの5点交換が残ったスケルトンを得たなら、ステッカーに番号を振ってすぐにこの類のアルゴリズムが使えるかどうか調べてみましょう。しかし、探すのにあまり時間を掛けすぎないようにしてください。エッジのインサーションについては、4.2節のコーナーファーストについて話すところでまた触れます。

2.4.7 その他のインサーション:2コーナー、2エッジ(Other Insertions: 2 Corners and 2 Edges)

2つのコーナーと2つのエッジがそれぞれ交換するようなスケルトンになることがあるでしょう。(つまり、PLLのJ、T、Vなどです)

このような場合、いくつかの10手アルゴリズムを知っておくと役立ちます。

Fw2 R D R’ Fw2 R D' R D R2 (J perm)
Rw' U Rw' U2 R B' R' U2 Rw2 B' (T-perm + corner twist)

11手のものも多くあります。

R U2 R' U' R U2 L' U R' U' L (J perm)
R2 D B2 D' Fw2 D B2 D' Fw2 R2 U' (J perm)
R2 Uw R2 Uw' R2 F2 Uw' F2 Uw F2 U' (T perm)
R' U R U2 L' R' U R U' L U2 (J perm + corner twist)

全てを載せたわけではありませんが、このアルゴリズムに加えて、この逆手順やシフトしたものでも2コーナー+2エッジがそれぞれ交換されます。このアルゴリズムの逆手順は全く同じように作用することがわかるでしょう。 つまり、このことを知っていれば新しいアルゴリズムを学ぶことなく、キャンセルする確率が二倍になるのです。あまり多くの手数をキャンセルすることは望めませんが、多くのアルゴリズムを知っていれば知っているほどよいでしょう。

一つ例をあげましょう。次のソルブを見てください。

2C2E Insertion - Example

スクランブル: B' L' D2 R U F' U' L U2 D R2 U2 F B R2 B U2 B L2 B2 U2
B' F D2 //疑似2x2x1 (3/3)
L' B * R2 //疑似3x2x2 (3/6)
F2 D F' D2 F //NISSを使って発見 (5/11)
R' D' R D2 F U2 //NISSを使って発見 (6/17)
* = B2 L B L' B D2 F' R F D2 //2c2e insertion (9/26)

スケルトンの最後のところはNISSを使って見つけたものなので、ここまで読んだだけでは少し意味がわからないことでしょう。「*」と書かれた場所には、準最適なJperm B' R2 B R B' R2 F R' B R F' を挿入することができ、2手がキャンセルして1手になり、最終解答になります。

2.4.8 その他のインサーション:3エッジ、いくつかのコーナー(Other Insertions: 3 Edges and Some Corners)

3つのエッジと、4つか5つ(あるいはもっと)のコーナーが残ったスケルトンが少ない手数(たとえば13手)でできることもあるでしょう。このときエッジ3-cycleのエッジをインサートして いくつかコーナー3-cycleを必要なだけインサートして解くこともできます。しかし、別のやり方もあります。「セクシームーブ」(R U R’ U’)ではエッジの3-cycleと歪んだコーナーの2-cycleを2回繰り返すことになることがわかると思います。 この短いアルゴリズムやその派生をインサートすることで、エッジの3-cycleをとても効率的に解くことができるのです。もちろん、一回のインサーションでコーナーも完全に揃うのは、とてもラッキーときだけです。コーナーにこういった影響を与えて、4つか5つかよいコーナーが残るようにする、というのが望み得る最良のことになる場合が多いです。 こういうとき役立つのは「セクシームーブ」だけではありません。ブロックコミューテータもよいツールです。speedsolving.comのこのポストの中で、Cale Schoonはこの類のインサーションについての実例を3つ挙げています。彼の解答はすべてNISSを使っていますが、スケルトンを作るまでのステップは無視して構いません。インサーションだけを見てください。

もう一つのアプローチはreverse NISS(第3.3節も参照)です。これは、セクシームーブをインサートすることで何をしているのかを理解する助けになるでしょう。

2.4.9 その他のインサーション: Conjugateをして揃える(Other Insertions: Conjugate and Solve)

訳注:
Conjugateの適切な訳語が思いつかないので保留しています。別の箇所でも書きましたが、数学用語としては共役という意味があります。そのままコンジュゲートとカタカナで訳出してもよいかもしれません。インターチェンジもそのまま使われていますし。

4つのエッジと4つのコーナーがあり、それぞれ4点交換されるときに、一つのインサーションだけで揃えることができる状況というものがあります。このケースは次のように揃えられます。

揃っていない8つのピースをすべて同じ面に集めます(セットアップ)。これで集めた面での単一のムーブで4点交換ができます。そして、8つのピースを元の場所に戻します(逆セットアップ)。8つのピースが2点交換を4つ組み合わせたものであるときにも、このテクニックは使えます。そのときは、「インターチェンジ」は180度のもの、たとえば U2 などになります。もしピースの数が8つちょうどでなかったり、適切な交換ができない場合には、3.3節で説明するreverse NISSをまた使うことができます。

実例を見てみましょう。45

Conjugate and Solve - Example

スクランブル: R2 L2 D2 F2 D' R2 U' B2 D' F2 U2 F' D2 L' F U B F2 U2 F2 L
U2 F B' L2 D2 //2つの2x2x1ブロック (5/5)
F' * R F2 R' L2 B //4エッジと4コーナー以外完成 (6/11)
* = U + L' B L' D L B' L $ U' //4 エッジ (9/20)
+ = F2 L' B2 L F2 L' B2 L //3 コーナー (5/25)
$ = L' D L U L' D' L U' //3 コーナー (5/30)

見てわかるように、この場合のインサーションは、4点交換を揃えているわけではなく、「通常の」インサーションでコーナーが完成しています。ところが、Mirek Goljanがここで提案しているのは、たった一回のインサーションで全てを揃えられるということなのです。そのためには、同じスケルトンの*部分に次の手順をインサートします。

(B D R2 B R'B2 D U2 F') U (F U2 D' B2 R B' R2 D' B')

この長いインサーションでも同じ結果(30手)になります。

同じようなLast layerのアルゴリズムもいくつかあります。その一つは次のようなものです。

(R B2 R2 U2 R) B (R' U2 R2 B2 R')

その他のアルゴリズムはこちらの投稿46を参照してください。

Here’s one example alg for each relevant OLL case. (Invert the middle move to set up the case.)

(R B2 R2 U2 R) B (R' U2 R2 B2 R')
(L' B2 L2 U2 L') B' (L U2 L2 B2 L)
(R U' R2 D' L) F' (L' D R2 U R')
(R U2 L' B L) U2 (L'B' L U2 R')
(R U2 R' F' L') U2 (L F R U2 R')
(L' F U2 B' R) U2 (R' B U2 F' L)

(found using JACube)

I note there are 5 other 11f* OLLs (besides the ones that flip 4 edges), of which 2 can also be solved with this type of conjugation.
(R' F2 R2 U2 R') F2 (R U2 R2 F2 R)
(R' U F2 D' F) U2 (F' D F2 U' R)

2.4.10 手数カウント(見積もり) (Move Count (an Estimate))

ここでは、普通のインサーションにおいてどのくらいの手数がかかるのか、見積もってみましょう。数学的に証明したわけではないヒューリスティックな見積もりですし、手数は次のようなことによって決まることを覚えておいてください。

  • どのくらい多くのコミューテータやアルゴリズムを知っているか。また、その認識能力。
  • スケルトンの長さ。スケルトンが長ければアルゴリズムをインサートする箇所が多いので、より多くのキャンセルを狙えます。(しかし、この理由のために長いスケルトンを選んではいけません!)

見積もりを持つことは、インサーションを探すのに時間をかける価値があるのか、そうでないのかを判断するうえで役に立ちます。もし30手より短い解答を達成したいとして、3つのコーナーが残ったスケルトンを23手で作れたなら、おそらく達成できるでしょう。25手だったら、少し幸運が必要です。

異なるスケルトンで比較することもできます。18手かかる4コーナーのスケルトンなら、25手かかる3コーナーのスケルトンよりよいでしょう。

参考になる数字を出しておきます。47

インサーションの種類 手数
コーナー3-cycle 5/6
エッジ3-cycle 7
2つのねじれたコーナー (2コミューテータ) 8
3つのねじれたコーナー (2コミューテータ) 9
4コーナー(2コミューテータ) 10
コーナー5-cycle 10/11
2コーナー、2エッジ(2cycleを2回) 10

2.4.11 インサーションファインダー (Insertion Finder)

Baiqiang Dongによって開発されたInsertion Finder48は、インサーションを探して解答の中で何かを見逃していなかったかを確認するために役立つツールです。スケルトンを与えると、最大で4つのインサーションを探すことができます。

特に、3コーナーや3エッジなどの簡単なケースで役に立ちます。複雑なものについては、人間には発見不可能(あるいはとても困難)な解答を見つけることがありますから、利用は自己責任で!

訳注:
インサーションファインダーを使うと、自分が見つけられなかったインサーションを見つけることができるので、自分のFMCのソルブを振り返るときに使うといいでしょう。下記に出力される画面の例を下記の追加します。インサーションに使われる記号はなぜか絵文字なのでかわいく見えます。

Insertion Finder インサーションファインダーの出力画面例

2.5 その他の簡単な戦略(Other Simple Stragies)

2.5.1 戻ってやり直そう(Go Back and Change Your Sove)

よいスタートを切ったあとで詰まってしまったら、「そこまでのソルブを一手ずつ見ていく」ということをしてみましょう。 まだ揃えていないピースしかない面が、少なくとも1面、出てくるのを探しながらやってみましょう。見つかったら、その面を動かしてみましょう(すでに揃えたブロックは崩れません)。可能性は3種類(UU2など)あります。こうすると、元々のものよりほんの少し(1手)だけ長くなって、3通りのスタートが得られるでしょう。次へのつながりがよくなるなら、たった1手は安いものです!

自由に動かせる面が2つ見つかったなら、もちろん両方使ってみても構いません。追加するムーブはランダムなものでよいですし、そうしなくてもよいです。新しいペアができたり、EOがもっとよくなるのなら、それで十分です。しかし、何手か追加してもすぐにわからず、しばらく進んでいってようやく何が起こったかわかることもあるでしょう。

2.5.2 幸運を手に入れろ! (Get Lucky!)

当たり前ですが、幸運は学べるスキルではありません。しかし、FMCにおいてはそうすべきなのです。 もし手数が同じであれば、LLスキップで終わる「単純な」ソルブは、複雑でアンラッキーなものと同じくらい価値があります。可能な限りたくさんの代替案を試してみるのがよい、というのはこのためです。10回や20回だけやってみるよりも、100回やったほうがスキップする確率は高くなります。

訳注:
LLスキップを引き当てる幸運値はトレーニングできませんが、LLのアルゴリズムやサブステップをたくさん知っている人ほど、その確率を高くすることができます。開眼3x3x3のスキルはFMCには直接影響しないと言われますが、速い人はそもそもたくさんのアルゴリズムを知っていて、制限時間内に何度も試行錯誤をすることができるので、有利かもしれません。他の競技を学ぶことでFMCに生きてくることがある、というのは面白いですね。たとえば、原著者であるSebastiano Trontoは目隠し競技の達人(3x3x3目隠し、4x4x4目隠し、5x5x5目隠しのイタリアNRホルダー)でもあります。

2.5.3 一つ目の例: 最後のペアをインサート(First Example: Insert Last Pair(s))

F2L-1が完成したあと、最後のペアをインサートすることでF2Lが終わります。これは、幸運が振ってこない限り、あまりよいやり方ではありません。幸運を引き当てるチャンスを高めるには、考えうる全ての方法で最後のペアをインサートしましょう。

たとえば、最後のペアが既にできているとすれば、少なくとも3つの違う方法でインサートすることができます。U R U' R'U2 R U2 R'、そして R' F R F'です。VHF2LやZBF2Lのアルゴリズムをいくつか知っていれば、スキップを引くチャンスを高めるのに役立つでしょう。しかし、単に暗記するよりも、どういう仕組みでうまくいくかを学ぶとよいでしょう。

ペアをインサートする別の方法の例として、次のソルブを考えてみましょう。(このスクランブルはGerman Forum Competitionのもので、premovesを使わないようにしたものです)

Insert Last Pairs - Example

スクランブル: D' R' U' F U2 F2 L2 D' B2 F2 D' L R' D F' U' R' B' R2 F D U' B' R' U' F
U2 F' U' //2x2x2
B' D B //2つのエッジの向き合わせ
D2 L D2 B2 //2x2x3 + 6 ペア
B' //ペアを一つ保存 (F2L on R)
L F L' F' //別のペアをインサート
B D L' D' //保存しておいたペアをインサート
U' L2 U L U' L U L' //Last Layer

このとき、最後のペアのインサートをどうやって選んだかというと、最後にPLLスキップをしたからです。ところが、実はもっとよいインサート方法があって、Cube Explorer (PCのソフトウェア)見つけたものがこちらです。

訳注:
元々の解答の27手でも十分すごいのですが、ペアの保存方法と最後のインサート方法を変えることで、20手の解答ができました。上記に示すように、U R U' R'U2 R U2 R'R' F R F'といった手順を順番に試してみるだけでも価値はあります。

Insert Last Pairs - Example

スクランブル: D' R' U' F U2 F2 L2 D' B2 F2 D' L R' D F' U' R' B' R2 F D U' B' R' U' F
U2 F' U' //2x2x2
B' D B //2つのエッジの向き合わせ
D2 L D2 B2 //2x2x3 + 6 ペア
B' U' //ペアを一つ保存  (F2L on R)
L F L' F' //別のペアをインサート
L U L B //保存しておいたペアをインサートして、スキップ!

2.5.4 二つ目の例: アルゴリズムの使い方(Second Example: How to Use Algorithms)

まず最初に対称なアルゴリズムを識別できるようにしておきましょう(もっと正確にいえば、対称なケース)。つまりF R U R' U' F'で揃うOLLはSプレーンについて対称なので、同じケースはB' R' U' R B Uでも揃います。もし使いたいのであれば、対称なケースも使えるようにして、スキップ(あるいはよいケース)のチャンスを二倍にしましょう。このトリックがうまくいくのは、二つのアルゴリズムは同じOLLケースを揃えるためのものであって、ピースの交換に異なった影響を与えるものだからです。しかし、CLLについては少し違います。同じCLLケースを揃えるアルゴリズムがあって、コーナーが揃わないなら、ほかのアルゴリズムを使ってもコーナーは揃いません。

極端な例を見てみましょう。R U2 R' U' R U R' U' R U' R'で揃うOLLを考えます。これと左右対称のL' U2 L U L' U' L U L' U Lを使うことで、同じケースを4つの向きから揃えることができます。(ほかの2つは逆手順です)このアルゴリズムは、「2-gen」のLast layerアルゴリズムに当てはまることですが、コーナーの相対的な位置関係には影響しません。

次に、学んだときの目的に従ってアルゴリズムを使う必要はありません。F R U R' U' F'について考えると、おそらくOLLのひとつとして知っていることでしょう。ところが、コーナーを無視してこれを使うこともできます。すると、F2L完了時点で2つの悪いエッジ(bad edge)が残っているときに、このアルゴリズムを4つの向きから使うことでスキップするか(あるいは簡単なケースになるか)どうかを試すことができます。

第3章 高度なツール (Advanced Tools)

ここまでの章では、よい解答を見つけるために必要な基本的なテクニックを見てきました。この章では、もっと高度なツールを紹介します。必須ではありませんが、探索に行き詰まったときの助けになります。

3.1 逆スクランブル(Inverse Scramble)

いいスタートが見つからない時は、逆スクランブル(Inverse scramble)を試してみましょう。逆スクランブルで解答を見つけたら、それを逆手順にすることで通常のスクランブルに対する解答になります。複雑そうに見えますが、実はとてもシンプルです。

Tim Reynoldsの北アメリカ記録から例を挙げましょう。

逆スクランブル - Example

スクランブル: D2 L2 B R2 U2 F' L2 U2 B2 L2 F' D L2 B U L' U2 L' F' R'
逆スクランブルで
R' U F' L2 //2x2x2 (4/4)
F2 D' B' * D2 B //2x2x3 (5/9)
R2 F R2 F' R2 //F2L-1 (5/14)
F D' F' D //3コーナー以外完成 (4/18)
* = B' U2 B D B' U2 B D' //最後3コーナー (6/24)

この解答を追いかけるには、まず逆スクランブルを回してから、解答のステップに入りましょう。画像は「ノーマルスクランブル」のものです。逆スクランブルのものではないので、逆スクランブルしても一致しません。最後に、逆スクランブルに対するR' U F' L2 F2 D' B2 U2 B D B' U2 B D B R2 F R2 F' R2 F D' F' Dという解答が見つかりました。これを逆手順にしたものが上記の最終解答です。

よくある間違いとして、通常のスクランブルと逆スクランブルはまったく関係がないという考えがありますが、実はこの二つはよく似ています。たとえば、ZZを使うなら、二つのスクランブルを見て同じ数の悪いエッジ(bad edge)があるけれど違う場所にあることがわかるでしょう。また、どちらか一方で見つけたブロックはもう一方にもあって、色の組み合わせや場所が違っていることもわかるでしょう。

一般則は次の通りです。

通常のスクランブルでピース「X」がピース「Y」の場所にあるならば、逆スクランブルではピース「Y」はピース「X」の場所にある

すなわち、揃ったピースと、場所はあっているがねじれているピースは、逆スクランブルにおいてもそれぞれ同じようになっています。ねじれたコーナーは逆方向にねじれます。「固定された」ブロックは同様に残りますが「移動する」ブロックは違うピースに入れ替わり別の場所に行きます。

公式/非公式の試技で、開始時に逆スクランブルをそのまま書いておく人もいますし、NISSなどを使うときに書く人もいます。こうしておくと、特に努力することなく、使いたいときいつでも逆スクランブルを使いやすくなります。ただし、最初に紙に書いて間違いがないかを確認しなければなりません。私はこうする代わりに、通常のスクランブルを右から左に読みながら、頭の中でそれぞれの記号を逆にして逆スクランブルを使います。 最初は難しいでしょうけれど、最終的には普通のスクランブルと同じくらい速くなりますし、ほとんど苦労しないでしょう。この手法を取るかはあなたの好み次第です。

そのままでも役立つテクニックですが、ソルブの最初で詰まったときや単にもっと多くの可能性を探索したいときに、ここで説明したアイディアは次の節で話すことの基礎になります。

3.2 疑似ブロック、プリムーブ、NISS (Pseudo Blocks, Premoves and NISS)

3.2節はまとめて同時に読むといいでしょう。ここで説明する3つのテクニックは密接な関連があります。

3.2.1 疑似ブロック (Pseudo Blocks)

疑似ブロックを使った例はこれまでにもいくつか見てきました。この概念をもっとわかりやすくするために、次のスクランブルを詳しく見てみましょう

スクランブル: F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'

R2 Fすれば2x2x1ブロックができます。2、3手で2x2x2ブロックに拡張できればいいですが、L' U B' Dとさらに4手かかるのはちょっと多すぎます。ところが、L2 D'とやってみましょう。つまり、合わせてR2 F L2 D'と回すと次のようになります。

333fm キューブのDFLコーナーを見てみましょう

ここでできているのは本物の2x2x2ブロックではなく疑似2x2x2ブロックです。このときのD面を一時的にD2だけズレた状態であると考えて、すべてが完成したあとでD2するものだと考えてみることができます。たとえば、このまま(非効率的ですが)CFOPでソルブを進めてみましょう。

R2 F L2 D' //Pseudo 2x2x2
B' U2 R' U2 R2 U R //Cross and second pair
U2 F' U F U' F' U' F //Third pair
L U2 L' //Fourth pair
B L' B' U' B U L U' B' //OLL
F2 D' L2 D F2 R2 D B2 D' R2 //PLL
D2 //Undo premove

このケースであれば、D2はOLLの前やOLLとPLLの間にやってしまっても構いませんが、F2Lのステップが終わっていないなら最後にやらなければなりません。

3.2.2 プリムーブ (Premoves)

前の節で示した状況はそこまで難しいものではありませんが、「疑似性 (pseudoness)」を考え たまま、ソルブを進めるのは難しいでしょう。F2Lのペアの認識はすぐにはできませんし、F2Lがズレた状態でのOLLやPLLを認識することを考えると、通常はとんでもないことになります。たとえば、Rだけズレたものを考えてみましょう!

疑似ブロックを作ったまま進めるとよいと言う人もいるでしょうが、全てを簡単にしてしまうワザがあります。全て揃った最後にやるべきムーブ(ここではD2)をスクランブルの前にやるだけでよいのです。(なので、この手法は「プリムーブ」と呼ばれます)さあ、やってみましょう!

プリムーブで修正したスクランブル Example

スクランブル: D2 F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'
R2 F L2 D' //2x2x2
B' U2 R' U2 R2 U R //Cross and second pair
U2 F' U F U' F' U' F //Third pair
L U2 L' //Fourth pair
B L' B' U' B U L U' B' //OLL
F2 D' L2 D F2 R2 D B2 D' R2 //PLL
ソリューション:

このような解答を見つけたときには、プリムーブを解答の最後に付け加えることで元のスクランブルに対する解答になると覚えておきましょう。一つ前の節で見たものはこうして得られたものです。複数手のプリムーブをやることもできます。例として次のソルブを見てみましょう。これは私の最初の公式ソルブで、元イタリア記録のものです。スクランブルする前にプリムーブを入れるのを忘れないようにしてください。

プリムーブで修正したスクランブル Example

スクランブル: U L' F' L2 F' D2 F'B' U' R2 U L' F2 U' F2 L2 U2 F2 L2 U2
Premoves: D2 B2
R2 B' R2 B //2x2x2, found premove B2 here
D L2 F D F2 //2x2x3
L' D F' D2 F D' //F2L-1, found premove D2 here
L' D * L' F L' F' D' L' //All but 3 corners
* = B L' F L B' L' F' L //Last 3 corners

3.2.3 NISS

前の節の最後の例では、2つのプリムーブを、2つの違う時点で見つけました。2つ以上のプリムーブが必要な疑似ブロックを見つけるのは少し難しいです。たとえば次のスクランブルを見てみましょう。

F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'

同じように2x2x1ブロックから始めてみましょう(R2 F')。ここにD F'というプリムーブを加えることで2x2x2ブロックができることに気づくのは、たとえ熟練者でも難しいでしょう。加えると次のようになります。

D F' F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'
ここにR2 F'をして2x2x2ができる

しかし、NISS (Normal-Inverse Scramble Switch)を知っていれば、こういったプリムーブを見つけることはそう難しくありません。 このテクニックは2009年にRazoux Schultzによって最初に考案されました。ここ説明する概要は、Tomoaki Okayamaによる素晴らしい投稿によるものです。[^3-2-3]

最も重要な事実は、次の点です。

スクランブルと解答は、単一のムーブのループ配列として考えることができ、これはキューブの状態にまったく影響しない。 {; .notice}

たとえば、抽象化して、A B C Dをスクランブル、p q r sをそれに対する解答と考えてみましょう。A B C D p q r s という配列で、キューブは完成状態に戻る。ここで、同じように、「ズラした」配列を考えてみると、どれもキューブの状態に影響しないことがわかります。

s (A B C D p q r s) s’ = s A B C D p q r
r s (A B C D p q r s) s' r' = r s A B C D
q r s (A B C D p q r s) s' r' q' = q r s A B C D
p q r s (A B C D p q r s) s' r' q' p' = p q r s A B C D
D p q r s (A B C D p q r s) s' r' q' p' D' = D p q r s A B C
. . .

もちろん、逆手順にしてもキューブの状態に影響しません

D2を使う最初のプリムーブの例では、このループは次のようになっていました。

(Scramble) R2 F L2 D' (Other moves) D2

言い換えれば、ここでの「R2 F L2 D' (Other moves) D2」をスクランブルに対する解答と見なすことができるわけです。つまり、「R2 F L2 D' (Other moves)」を「D2 (Scramble)」に対する解答と見なすこともできます。[^3-2-3-2]

プリムーブの仕組みを理解するにはこれで十分だと思います。このことを知っていれば、通常のスクランブルに対する部分解答と逆スクランブルに対する部分解答を見つけることができるのです。 どういうことでしょうか?同じスクランブルで同じようにR2 Fから考えてみましょう。この時点で、(W)を何らかの手順と考えると、解答はR2 F (W)となることがわかります。ここでのループ配列は次のようになります。

(スクランブル) R2 F (W)

前にも言ったように、これの逆手順は「同一」のループです。(逆スクランブルを使って解答を探すのと同じです)

(W)' F' R2 (逆スクランブル)

なので、(W)' F' R2(逆スクランブル)に対するに解答、またたとえば(W)'F' R2 (逆スクランブル)に対する解答と考えることができます。このように、次の一般則を導くことができます。

通常スクランブルで見つけた手順の逆手順を、逆スクランブルに対するプリムーブとして使うことができる

仮に、逆スクランブルに対して(K)という解答を見つけたとしましょう。

3.3 Reverse NISS

3.4 Useful Algorithms

3.5 Pair Analysis

3.6 Solving with Skew Centers

第4章 その他の手法 (Some Other Methods)

4.1 Starting With EO

4.1.1 EO + Blockbuilding

4.1.2 Domino Reduction (and HTA)

4.2 Corners First

第5章 練習方法 (How To Practice)

多くの人は、上達するためには「練習と、練習と、練習が必要です!」と言うでしょう。これは真ですが、練習のやり方を知る必要もあります。ここでは、FMCで上達するための練習方法についていくつかアドバイスをします。

5.1 時間無制限と大会シミュレーション(No Time Limit and Competition Simulation)

常に大会をシミュレーションして1時間以内に解答を完成させるようにすることは一番よい方法ではありません。これと反対に、時間制限を設けないで、結果に満足するまで同じスクランブルを何度もやることをおすすめします。

1時間の時間制限を設けた練習が悪いわけではありません。自分のレベルを判別することができるようになるでしょうし、タイムマネジメントの戦略を探すのにも役立つでしょう49。私がおすすめするのは、FMCのオンライン大会に参加することです。たとえば、David Adamsのウェブサイト50やGerman Forum competition51などがあります。

大会と同じように1時間を使ってやってみてから、よい結果を得るまで続けることが、ちょうどよい妥協点でしょう。

訳注: 2020年1月時点で、上記のDavid Adamsのウェブサイトは動作していないようでした。
Speedcube(rs).deのフォーラム上での大会は継続されています。

訳注: 日本国内においてはTribox Contestが毎週FMCを含むオンラインの大会を開催しています。
Redditのr/CubersコミュニティではCubers.ioというウィークリーの大会を開催しています。

5.2 上級者と比べよう (Compare Yourself to the Masters (and Study their Solves))

練習したいときは、既にどこかでFMC上級者が解いたスクランブル使ってみるとよいでしょう。あなたの解答と上級者のものを比べて、あなたが気付かなかった点を見つけることができます。全ての秘密を手中に収めましょう!

加えて、ブロックビルディングや他の解法の訓練をするのであれば、上級者の解答を研究することは必須です。オンライン大会の過去のラウンドの結果から見ることもできますし、speedsolving.comのFMCスレッドでも見つかるでしょう。数年前、ブログ型のウェブサイトhttp://fmcsolves.cubing.net/を始めて、FMCの素晴らしいソルブ例を集めています。しかし、ここ数年更新していません。

5.3 Hard Scrambles

「最悪ケースのシナリオ」において何ができるかを知るために、上級者でも難しかったというスクランブルをやってみるのもよいでしょう。ここ52で難しいスクランブルのリストを得られます。

5.4 熟考する練習(Deliberate Practice)

よいスタートがなかなか見つからないと感じているのであれば、こういう練習をしてみましょう。スクランブルをして、2x2x2や2x2x3などを気が済むまで探します。そのあと、スクランブルを変えて、同じように続けます。同じ考えをF2L-1や他のサブステップについてやることもできます。

5.5 ファストスクランブル(Fast Scrambling)

必要ではないとしても、NISSのようなテクニックを使うときや、単に私と同じように、ソルブ中に何度もキューブをスクランブルすることがあるなら、「ゆっくり過ぎない」スクランブルを試してみるといいでしょう。最も重要なことは正確性です。(スクランブルを間違えないこと!)20手のスクランブルを10秒でできるようになれば上出来です。

5.6 よく学べ!(Study!)

大事なことを言い忘れていました。このガイドをよく読んで学び、他のリソースからも学び、既知のものも未知のものも含めてアルゴリズムやテクニックを学びましょう。私はspeedsolving.comの「FMCスレッド」を二回、最初から最後まで読みました。

アルゴリズムを学びましょう。膨大な量のアルゴリズムがあります。たとえば、LLEF(Last Layes Edges First)53やSummer Variation54などがあります。繰り返しますが、単に暗記するのではなく、どのように機能しているのかを理解するようにしましょう。

第6章 公式大会 (In Competition)

6.1 解答の書き方(How to Write a Solution)

大会のときでも練習のときでも、解答は持ち替え記号なしで書くのがよいでしょう。これにはいくつもの理由があります。

  • 持ち替え記号を使うと、間違いを起こしやすい
  • 持ち替え記号があるとキャンセルが見つけにくい。R z' U' のようなことをやるのはとんでもない手数のムダです!
  • ソルブ中にキューブを持ち替える場合、どの面がどこにあるかを常に意識しておかなければならない

ではどうやって持ち替え記号なしで解答を書くのか? B面でPLLを回すのは厄介でしょう。簡単なやり方があるのです。BOYカラースキーム(標準配色)で標準的な持ち方を維持したまま、「白センターのある面は常にUだ」「緑はF」「黄色はD」と覚えておけばいいだけです。

6.2 バックアップ解答(Backup Solution)

6.3 タイムマネジメント(Time Managment)

6.3.1 ひっからないように(Don’t Get Stuck)

6.3.2 全ての可能性を調べようとしない((Don’t) Explore Every Possibility)

付録A その他の参考資料 (Other Resources)

付録B 回転記号 (Notation)

付録C LLアルゴリズム (Last Layer Algorithms)

  1. 訳注。World Rubik’s Cube Championship 2017のこと。2年に1回の頻度で開催されるルービックキューブの世界大会を指す。2017年はパリ(フランス)、2019年はメルボルン(オーストラリア)で開催された。 

  2. Western Color Scheme 

  3. http://cube.crider.co.uk/visualcube.php 

  4. https://alg.cubing.net 

  5. ブロックビルディングとは、複数のピースからブロックを作り、つなげるテクニックのことです。CFOPにおけるF2Lとは大きく違うものと見なされがちですが、F2Lも一種のブロックビルディングと見なすことができます。対比すべきものとしては、エッジオリエンテーション(EO、PetrusやZZで用いられる)や「コーナーファースト」、アルゴリズムやコミューテータの利用などがあります。これらのテクニックは全て本書で説明されます。 

  6. たとえば、HARCSというは無料で利用できます。 https://www.speedsolving.com/forum/threads/ 

  7. スピード解法では、ブロックを一つずつ揃えていくほうが、人間工学に叶った動きになるため、望ましいです。しかし、FMCにおいてこれは当てはまりません。効率性(つまり、手数)だけを気にするべきです! 

  8. ここでいう「一直線に」(Linear)解くとは、FMCにおいては別の可能性を考えたり、キャンセル/やり直しを考えないで解くことを言います。 

  9. F2L-1とはF2Lの完成状態から、コーナーとエッジのペアを一つ欠く状態を言います。 

  10. Color Neutralとはキューブをどの色からスタートしても解くことができることを言います。たとえば、CFOPのクロス色がどの色でもできる、あるいはPetrusの2x2x2ブロックを8つあるパタンからどれでもできるということです。 

  11. 不一致ブロックは、特にFMCにおいて「疑似ブロック」(Pseudo-block)と呼ばれることがあります。これはRouxやZZ、Heiseにおいて役に立つテクニックですが、他の解法でも使うことができます。疑似ブロックは、作る必要があるものとは異なるブロックで構築されますが、同じ「スロット」に配置されます。たとえば、Rouxにおいては、3x2x1のSB(Second Block)はFBの反対側にある4つのいずれかのブロックです。このテクニックはpremoveと組み合わせることで非常に強力なツールになります。詳細は第三章で説明します。 

  12. 現在のステップで工夫することで次のステップに何らかの影響をもたらすのはよい習慣です。この点については後の章でまた書きます。 

  13. XCrossとは、クロスと最初のペアを同時に作ることです。2x2x2ブロックと2つのエッジを同時に揃えることと見なすこともできます。 

  14. 訳注。ZBF2LはEOLS (Edge Orientation Last Slot)とも呼ばれます。「F2Lの4つ目の手順を調節することでEOを同時に処理し、F2L終了時に必ず上面に十字が出来るようにするというSubstepです。VHLSとは違い、IT化の時点で手順を変える場合もあるというのが特徴です。」(CubeVoyageより) 

  15. 訳注:ノルウェーのキューバー。2004-2006年にFMCのノルウェーNRを達成。2005年の世界大会でFMC第2位。 

  16. スケルトンとは、部分的な解法で、いくつかのピース(通常は2つから6つ)を未完成の状態で残しておくものを言います。 

  17. ソルブのより前の段階で数手をインサートすることで完成させるテクニックです。これもすぐに解説します!もうちょっと待って! 

  18. http://www.speedsolving.com/forum/threads/fewest-moves-tips-and-techniques.1566/#post-16209 

  19. 19 HTM Solve by Mirek Goljan and Guus Razoux Schultz 

  20. 著名な例はZBLS(ZBF2Lとも呼ばれる)やWinter Variationです。これに限らず非常に沢山あります。調べてみましょう! 

  21. 「準最適」とは最良の解法よりも多くの手数がかかる解法のことです。 

  22. speedsolving.comの投稿による。もちろん、何が「よいスタート」であるかはあなたのレベルによって変わります。ここでの手数は、熟練者を目指す人にとってのよいゴールとなるように考えられています。もしあなたがそこまで上達していないなら、あまり効率的でないブロックを作って進めてもいいでしょう。「よいスタート」を探すのに多くの時間を使わないようにしてください。最終結果だけがカウントされます! 

  23. もっと重要なルールは「決して『決して』と言わない!」ということです。 

  24. 一時間のあいだ考え続けなければならないので、楽をすることは非常によい習慣です。 

  25. ここでいう「計算する」とはチェスの用語のような意図があります。つまり、チェスプレイヤーは6-8手を「計算して」いると言われています。可能なムーブを考えて、そのカウンタームーブを考えて、総計で6-8手ということです。 

  26. 手数の数え方はHTM(ハーフターン法(Half Turn Method):180度も1手と数える)でもQTM(クオーターターン法(Quarter Trun Method):90度で1手と数える)でもSTM(スライスターン法(Slice Turn Method):Mなどのスライスムーブも1手と数える)でも構いませんが、どの数え方を使うかは先に決めておきましょう!(訳注:一般的にはHTMが使われます) 

  27. 3-cycleとは3つのピースによる巡回交換です。たとえば、PLLのA permとU permは3-cycleですし、L F R F' L' F R' F' (Niklas)のアルゴリズムも同じです。 

  28. https://www.speedsolving.com/wiki/index.php/Commutator  2

  29. たとえば、U Rという手順の逆手順はR' U'です。U' R'R Uではありません! 

  30. 例外はあります。たとえば、Tomoaki Okayama (岡山友昭)による次の実例と、そのディスカッションを読んでみてください。https://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-21#post-440873 

  31. [A:B] = A B A'という記法はconjugate(共役、対になった、結合)を表します。Aという手順はセットアップムーブとも呼ばれます。 

  32. これらのケースについては、speedsolving.comでのJackWのスレッドが説明してくれます。https://www.speedsolving.com/forum/threads/2-gen-edge-cycles.56224/ 

  33. 大会規則で「無制限の色付きステッカー」の持ち込みが許可されているのはこのためです。 

  34. ステッカーは3-cycleの動きが1から2、2から3、3から1へとわかるように貼ります。 

  35. 順番を決めるやりかたは他にも同様のものがあります。まずコーナーから始めたり、好きなステッカーから始めたりすることができます。首尾一貫してさえいればよいです。 

  36. 気を付けること:スケルトンにおいて二つの連続した平行な層の回転があるときには、相互に入れ替えてみて、よりよいインサーションがないかを探すこと!今回はそうではありませんが、決してわかりません。 

  37. 最後の2手(U' D)はE列の中層回転(E')と等価ですから、コーナーには影響しません。このムーブをする前後で3-cycleは持ち替えを法(modulo)として同じものです。(この場合はy’/y持ち替え) 

  38. B2 U' F' U B2 U' F Uもある。 

  39. コーナーの2-cycleが2つあるなら、インサーションを2回繰り返して揃えてもよいです。あとの節を参照してください。 

  40. これは別の何らかの方法で揃える必要があります。もう一回インサーションをする、など。 

  41. 私はコーナーには番号を振って、エッジには文字を振るのが好みです。こうすれば取り間違えることがありません。 

  42. http://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-126#post-1009830 

  43. コミューテータについて話すときには、「ピース」と「ステッカー」は違うものであることに気をつけましょう。 

  44. もっと知りたい読者のためには、speedsolving.comのFMCスレッドでのこの投稿から始まるディスカッションが興味深いでしょう。特に、2つ目の投稿では5点交換を揃えるための3点交換の組み合わせを見つける「法則」についての数学的証明があります。3つ目の投稿では、私が本書で行った説明と同じようなことが書いてあります。(私がこのテクニックを学んだのもこの投稿からです)4つ目の投稿にはこの手法を使ったソルブの実例が載っています。 

  45. https://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-214#post-1247800 

  46. https://www.speedsolving.com/threads/the-fmc-thread.13599/page-28#post-488378 

  47. ほとんどの例はこの投稿からです。 http://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-42#post-614593。一部、私の個人的な意見を加えて調整しています。 

  48. https://fewestmov.es/if 

  49. タイムマネジメントについては6.3節で話します。 

  50. https://www.ocf.berkeley.edu/˜dadams/fmc/ 

  51. https://speedcube.de/forum/showthread.php?tid=5795 

  52. https://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-88#post-842681 

  53. https://www.speedsolving.com/wiki/index.php/LLEF 

  54. https://www.speedsolving.com/wiki/index.php/Summer_Variation