付録 - 最少手数競技入門 by Sebastiano Tronto 第三版
付録A その他の参考資料 (Other Resources)
学習のための参考資料や役立つリンクをここに書きます。しかし、新しいチュートリアルがどんどん出てきていますから、このリストはすぐに古くなってしまうことでしょう。私がFMCを学ぶのに使ったものが他の人にとっても最良のものとは限りません。
Speedsolving.com
speedsolving.comはここで書いたすべての知識が書かれているところです。特に重要なスレッドは次のものです。
- The FMC thread
FMC専用スレッド。FMCの結果を共有したり、アドバイスをしあう場所。 - Fewest Moves: Tips and Techniques
Arnaud van Galenが役立つテクニックを集めているスレッド。このチュートリアルに含まれています。 - A tutorial for corner commutators by Brian Yu
Brian Yuによりコーナーコミュテータのチュートリアル。
その他のチュートリアル(Other tutorials)
- A 5-part video tutorial by Ranzha, first part (限定公開): https://www.youtube.com/watch?v=-gKAzXYonHI
- Pranav Manerikerによるプレゼンテーション(prezi)
オンライン大会
オンライン大会は同じスクランブルで他の人と競い合うだけでなく、複数のよい解答を見て学ぶことができるので、とても役に立ちます。過去のラウンドでのソルブも見てみましょう。
- fewest-moves.info online competition: https://www.fewest-moves.info/
- German forum competition: [https://speedcube.de/forum/showthread.php?tid=5795}(https://speedcube.de/forum/showthread.php?tid=5795)
キューブを揃えるプログラム
キューブを揃えるプログラムを使うことで、自分の解答と最適な解答を比べることができるので役立ちます。特に1つ目のブロック作りや、エンディングを短くするやり方などに使えるでしょう。
- Cube Explorer, a cube solving program by Herbert Kociemba: http://kociemba.org/cube.htm
あるケースに対する最適なアルゴリズムを見つけたり、部分的な解答に対する最良のエンディングを見つけるのに役立ちます。2.6.2節の最後の例を参照してもらうとわかりますが、インサートをすることで最適な解答よりも短い手数を出すこともできます!(2.6.2節の2つ目のソルブ例を参照) - Insertion Finder, by Baiqiang Dong : https://fewestmov.es/if
あるスケルトンに対する最適なインサーションを見つけられたかを確認できるツール - HARCS by Matt DiPalma (replacing JARCS by Johanes Laire):
サブステップに対する最適解答を探すのに役立つツール
その他のウェブサイト
- Ryan Heise’s website: http://www.ryanheise.com/cube/fundamental_techniques.html
特に「Fundamental Techniqes」のセクション - Lars Petrus’ website: http://lar5.com/cube/
ブロックビルディングの役立つ例
付録B 回転記号 (Notation)
標準的な回転記号(OBTM)は非常にシンプルで学びやすいものです。基本的な書き方は次のとおりです。
- 全ての面にはそれぞれ文字を割り当てる。
R
(Right)、L
(Left)、U
(Up)、D
(Down)、F
(Front)、B
(Back) - それぞれの文字は「その面を時計回りに90度回転する」ことを意味する。
U2
は「180度回転する」、U'
は「反時計回りに90度回転する」を意味する。
基本ムーブを次の表にまとめます。これさえあれば解答を書くことはできるようになります。詳しくは5.1節を参照してください。
その他のムーブ
その他のムーブとしては次のものがあります。
- 二層回し(Wide moves): 基本ムーブの後に小文字の
w
をつけて表記します。たとえば、Uw
、Rw'
、Dw2
と書きます。外側の層と一緒に内側の層も回します。
小文字のw
をつけて表記する以外に、基本ムーブの文字を小文字にする書き方(たとえばr
)もありますが、標準的なものではありません。 - 持ち替え記号(Cube Rotations):
x
、y
、z
のように表記します。これはキューブ全体を回転させるものです(3層を回転すると考えてもよい)。x
はR
と同じ方向に、y
はU
と同じ方向に、z
はF
と同じ方向になります。 - 中層回転:
M
=R L' x'
、E
=U D' y'
、S
=F' B z
中層回転の記号は公式大会のFMCソルブでは使うことができません。
付録C Reto Bubendorfの詰めキューブ練習 (Some exercises by Reto Bubendorf)
作業中
Retoが作成した詰めキューブの練習問題です。個人的にはとても役立つものだと思います。ここには解答を掲載しませんので、ぜひ自分自身で試行錯誤してみてください!
それぞれの問題にはRetoによる難易度(1~10)がつけられています。あなたの知識レベルによっては正確ではないかもしれませんが、指標としてお使いください。
C1. Direct Solve
最初の練習問題は最短の解答を直接見つけるものです。使えるテクニックは全て使って構いませんが、NISSやインサーションなどは使わずに、直線的に解いていくのが楽しいだろうと思います。
5手詰め
未着手
問題 | 画像 |
---|---|
(5a) Scramble: F R’ U F’ R2 U’ B’ R B R2 U Difficulty: 1 |
C.2 Find the skeleton
付録D ドミノリダクション入門(ちょっとだけ)
ここではドミノリダクションという手法について簡単に紹介します。ここでの説明はAlexandros FokianosとTommaso Raposioが作ったチュートリアルである「A Domino Reduction Guide」に基づいています。ここに書いてあること以上に詳しいリソースを探しているなら、ここから数ページはスキップしてA Domino Reduction Guideを読みましょう!
D.1 ステップ1:ドミノへの還元
ドミノリダクションの最初のステップは、キューブを<U,D,R,L2,F2,B2>
の手順の組み合わせだけで解ける状態に還元することです。詳しくは2.5.2節を読んでください。このような状態にするには、次のようにします。
- エッジの向きを揃える (F/B軸あるいはR/L軸について揃える)
- E列のエッジをE列に置く (それぞれ位置は気にしない)
- コーナーの向きを揃える揃える (U/D軸について揃える)
もちろん、ここで書いた軸以外についてDRを揃えることができます。
この最初のステップには様々なやり方がありますが、最も理解しやすいのは次のように考えることでしょう。
- エッジの向きを揃える
- 向きがズレているコーナーと位置がズレているエッジの数をそれぞれ「いい感じの数」にする
- すでに知っている「トリガー」になるようにセットアップする
- 「トリガー」をする
1番目は2.5節で説明したものと同じです。2番目から4番目を理解するために「トリガー」とは何かを説明しましょう。DR状態に還元しやすい基本形というのが4つあり、以下に示します。これはCFOPでF2Lのペアをインサートするのによく似ています1。
4c2e | 3c1e | 3c1e | 4c1e |
R |
R U' R' |
R U R' |
R U2 R' あるいはL F2 L' |
この画像ではU/D面のステッカーとE列のピースだけ色をつけています。対面色のステッカーは同じ色を使っています。U面とD面のステッカーは白で、F面とB面のステッカーは緑、L面とR面のステッカーは赤にしています。なぜこんな風に色を使っているかというと、U/D面のピースの「側面」の色はこのステップでは無視していいからです。対面色を区別する必要はありません。
画像の下にある「4c1e」「3c1e」などの記法は「4つのコーナーの向きがズレていて、1つのE列エッジの場所がズレている」ということを表しているものです。それぞれのムーブの最後の1手を逆手順にしても、DRの状態になるということを覚えておきましょう!
すなわち、2番目のサブステップでは悪いコーナーを3-4個に減らし、ズレたエッジを1-2個に減らすことを目指します。こうすると、次の3番目のサブステップでは、減らしたあとの3-5個のピースを上記の「トリガー」状態に持っていくために、<U,D,R,L2,F2,B2>
というDRの手順の組み合わせを使うことができます。この手順の組み合わせにないものはこのステップでは使わないでください。もし使うと、悪いコーナーやズレたエッジの個数が変わってしまいます。最後に、4番目のサブステップでは正しいトリガー手順を回して、DR状態にすることができます。
理想を言えば、エッジを揃えるのに単純化された非常に短い手順(1~3手)を見つけられるようになるといいでしょう。トリガーの状態にセットアップするのは少し複雑です。特に4c2eのケースに持ち込むのは難しいです。4c1eはのほうが簡単ですし、3c1eはさらに簡単になります。これは同時に気をつけなければならないピースの数が少なくなっていくからです。もちろん、3つの悪いコーナーと1つのズレたエッジが見つかったら、セットアップして3c1eのトリガーのどちらかを使えばいいでしょう。
ではここで実例を見てみましょう。
DR ステップ1
R' F' B L' //EO (4/4) D2 F //単純化して4c2e (2/6) D' B2 D' //セットアップ (3/9) B' //DRトリガー手順 (1/10)
最後にちょっとだけアドバイスしましょう。トリガーが使える状態にセットアップするのは非常に難しいので、NISSを使って逆スクランブルからセットアップがもっと簡単にならないか試してみるといいでしょう。
最初はDR状態にするというのが複雑に見えるでしょう。この手法をどんなときも使えるものだとは思わないほうがよいと思います。1時間という時間制限の試技の中で使えるようになるには、たくさんの練習が必要です。
D.2 ステップ2:残り全部!
DRができてから、解答を完成させるまでには様々なやり方があります。これはドミノリダクションのごく簡単な紹介なので、そのうち2つのやり方だけ書くことにしましょう。
D.2.1 ブロックビルディング
多くの人がDRができてから最初にやろうとするのは、「いつもの」ソルブのようにブロックビルディングをしてスケルトンを探すことでしょう。ただし、ドミノ手順の組み合わせだけを使ってやります。EOスタートアプローチのソルブと同じように、ピースの向きは既に揃えてあるので、簡単に合わせることができるでしょうし、スキップだって頻繁に起こります!しかし、一長一短があるもので、単純にEOスタートするのと比べると、DRまで持っていくには非常に多くの手数がかかります。
たとえば、この章の最初の方で見たソルブ例の続きを見てみましょう。
DR ステップ2 (ブロックビルディング)
R' F' B L' //EO (4/4) D2 F //単純化して 4c2e (2/6) D' B2 D' //セットアップ (3/9) B' //DR トリガー手順 (1/10) D2 L2 U2 //四角をもうひとつ追加 (3/13) D2 R2 //さらに追加 (2/15) L2 * F2 U' R2 F2 //3c (5/20) U B2 U' F2 U B2 U' F2 //3cを揃える (8-3/25)
DRをしてブロックビルディングをするヒントをもう一つだけ。最も重要なブロック(ペア、四角、3x2x1など)は、U面あるいはD面のピースだけで構成されたブロックです。E列はソルブの最後まで無視しても構いません。後でインサーションを使ったり途中を少し変えたりして揃えればいいだけです。たとえば、R2 U B2
のような手順があれば R2 Uw B2
と置き換えてもよいでしょう。これはR2 D L2
になります。
D.2.2 コーナーファースト (Solving corners first)
ドミノ状態に持っていくのに非常に効率的なアプローチは、いくつかのエッジと一緒にコーナーを揃えてしまうことです。そうしてから、残ったエッジをインサーションで揃えてしまいましょう。なぜかと言うと、DRが揃ったあとに使える、6~8手の短いエッジ交換手順が多くあるからです。例を見てみましょう。
M' U2 M U2
, (R2 Fw2 R2 U)*2
, (R2 Fw2 R2 Uw)*2
, (R2 F2 R2 U2)*2
(3エッジ)
(R2 U2)*3
, (M2 U2)*2
, R2 F2 R2 U2 F2 R2 F2 U2
, (R2 F2 Rw2 U)*2
(2e2e)
上で使ったのと同じDRについて、別のスケルトンを考える例を見てみましょう。
DR ステップ2 (コーナーファースト)
R' F' B L' //EO (4/4) D2 F //単純化して 4c2e (2/6) D' B2 D' //セットアップ (3/9) B' //DR トリガー手順 (1/10) D L2 B2 //“コーナーにバーを作る” (3/13) U' L2 U D F2 * D' U //3e (7/20) F2 U' F2 R2 B2 D' B2 R2 //3eを揃える (8-4/24)
「8手のエッジ3点交換をして4手もキャンセルしている、なんてラッキー!」と思うかもしれません。しかし、これはDRにおいてはよくあることです。この手法でエッジインサーションをすると、コーナーインサーションをするよりもずっと効率的になることがよくあります。
D.3 世界記録のソルブ
現在のFMC世界記録(単発)は、私がFMC 2019で出した16手です。これはDRを使ったものです。ここまで説明してきたテクニックをたくさん使いました。逆スクランブル、複数エッジインサーション(フリースライスも)、センターインサーション、「置換して短くせよ」…
最終解答はとてもラッキーを引きましたが、これはFMCとはどういうものかを代表する結果だったと思います。多くのことを知れば知るほど、ラッキーを引くチャンスは増えるのだ、ということです!
世界記録のソルブ
(U D' F R) //EO (4/4) (L2 F' B2) //トリガーにセットアップ (3/7) (U' B2 U' [1]) //DR (3/10) (R2 B [2] F D2) //5e (4/14) [1] = U D' F2 D U' [3] R2 //2e2eにする (6-4/16) [2] = E2 //4xにする (2/18) [3] = E M2 E' M2 //4xを揃える (8-6/20) 最初の解答: D2 F' D2 U2 F' L2 R2 [U' D B2 D B2 U] B2 F L2 R' F' D U' カッコで書いた箇所を[R2 D R2 D]に入れ替えて短くする。 一つ前のR2との間で2手キャンセルする 最終解答: D2 F' D2 U2 F' L2 D R2 D B2 F L2 R' F' D U' (16)
このソルブでは非常に複雑なアプローチをしていますが、実は、次のように別のDRトリガーに持ち込むことでずっと簡単に見つけることもできました。
(U D' F R)
//EO (4/4)
(L2 F' B2)
//トリガーにセットアップ (3/7)
(D' R2 D')
//DR (3/10)
(L2 F U2 D2 F D2)
//完成! (6/16)
しかし、どちらのやり方で進んでも、最後には同じ解答にたどり着きます。この16手はこのスクランブルでの唯一の最適解なのです。
-
1つ目の手順は1手だけなのでF2Lには似ていませんが ↩