第3章 高度なツール - 最少手数競技入門 by Sebastiano Tronto 第三版
高度なツール (Advanced Tools)
ここまでの章では、よい解答を見つけるために必要な基本的なテクニックを見てきました。この章ではもっと高度なツールを紹介します。必須ではありませんが、探索に行き詰まったときの助けになります。
3.1 逆スクランブル(Inverse Scramble)
いいスタートが見つからない時は、逆スクランブル(Inverse scramble、インバーススクランブル)を試してみましょう。逆スクランブルで解答を見つけたら、それを逆手順にすることで通常のスクランブルに対する解答になります。複雑そうに見えますが、実はとてもシンプルです。
Tim Reynoldsの北アメリカ記録から例を挙げましょう。
逆スクランブル - Example
逆スクランブルで R' U F' L2 //2x2x2 (4/4) F2 D' B' * D2 B //2x2x3 (5/9) R2 F R2 F' R2 //F2L-1 (5/14) F D' F' D //3コーナー以外完成 (4/18) * = B' U2 B D B' U2 B D' //最後3コーナー (6/24)
この解答を追いかけるには、まず逆スクランブルを回してから、解答のステップに入りましょう。画像は「ノーマルスクランブル」のものです。逆スクランブルのものではないので、逆スクランブルしても一致しません。最後に、逆スクランブルに対するR' U F' L2 F2 D' B2 U2 B D B' U2 B D B R2 F R2 F' R2 F D' F' D
という解答が見つかりました。これを逆手順にしたものが上記の最終解答です。
ノーマルスクランブル | 逆スクランブル |
---|---|
D2 L2 B R2 U2 F’ L2 U2 B2 L2 F’ D L2 B U L’ U2 L’ F’ R’ | R F L U2 L U’ B’ L2 D’ F L2 B2 U2 L2 F U2 R2 B’ L2 D2 |
よくある間違いとして、通常のスクランブルと逆スクランブルはまったく関係がないという考えがありますが、実はこの二つはよく似ています。たとえば、ZZを使うなら、二つのスクランブルを見て同じ数の悪いエッジ(bad edge)があるけれど違う場所にあることがわかるでしょう。また、どちらか一方で見つけたブロックはもう一方にもあって、色の組み合わせや場所が違っていることもわかるでしょう。
一般則は次の通りです。
通常のスクランブルでピース「X」がピース「Y」の場所にあるならば、逆スクランブルではピース「Y」はピース「X」の場所にある
すなわち、揃ったピースと、場所はあっているがねじれているピースは、逆スクランブルにおいてもそれぞれ同じようになっています。ねじれたコーナーは逆方向にねじれます。「固定された」ブロックは同様に残りますが「移動する」ブロックは違うピースに入れ替わり別の場所に行きます。
公式/非公式の試技で、始まったときにまず逆スクランブルを書いておく人もいますし、NISSなどを使うときに初めて書く人もいます。こうしておくと、特に努力することなく、使いたいときいつでも逆スクランブルを使えるようになります。ただし、試技を始める一番最初に、紙に逆スクランブルを書いてから、間違いがないかを確認しなければなりません。私はこうする代わりに、通常のスクランブルを右から左に読みながら、頭の中でそれぞれの記号を逆にして逆スクランブルを使います。 最初は難しいでしょうけれど、最終的には普通のスクランブルと同じくらい速く回せるようになりますし、ほとんど苦労しないでしょう。このやり方をするかどうかはあなたの好み次第です。
逆スクランブルはそのままでも役立つテクニックですが、次の節で話す内容の基礎になります。つまり、ソルブの最初で詰まったときや単にもっと多くの可能性を探索したいときに役立ちます。
3.2 疑似ブロック、プリムーブ、NISS (Pseudo Blocks, Premoves and NISS)
3.2節はまとめて一気に読むといいでしょう。ここで説明する3つのテクニックは密接な関連があります。
3.2.1 疑似ブロック (Pseudo Blocks)
疑似ブロックを使った例はこれまでにもいくつか見てきました。この概念をもっとわかりやすくするために、次のスクランブルを詳しく見てみましょう
スクランブル: F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'
R2 F
すれば2x2x1ブロックができます。2、3手で2x2x2ブロックに拡張できればいいですが、L' U B' D
とさらに4手かかるのはちょっと多すぎます。ところが、L2 D'
とやってみましょう。つまり、合わせてR2 F L2 D'
と回すと次のようになります。
R2 F L2 D'
と回した後にDFLコーナー側から見たキューブ
ここでできているのは本物の2x2x2ブロックではなく疑似2x2x2ブロックです。このときのD面を一時的にD2
だけズレた状態であると考えて、すべてが完成したあとでD2
するものだと考えてみることができます。たとえば、このまま(非効率的ですが)CFOPでソルブを進めてみましょう。
R2 F L2 D'
//疑似2x2x2
B' U2 R' U2 R2 U R
//クロス、2つ目のペア
U2 F' U F U' F' U' F
//3つ目のペア
L U2 L'
//4つ目のペア
B L' B' U' B U L U' B'
//OLL
F2 D' L2 D F2 R2 D B2 D' R2
//PLL
D2
//プリムーブをもとに戻す
このケースであれば、D2
はOLLの前やOLLとPLLの間にやってしまっても構いませんが、F2Lのステップが終わっていないなら最後にやらなければなりません。
3.2.2 プリムーブ (Premoves)
前の節で示した状況はそこまで難しいものではありませんが、「疑似性 (pseudoness)」を考え
たまま、ソルブを進めるのは難しいでしょう。F2Lのペアの認識はすぐにはできませんし、F2Lがズレた状態でのOLLやPLLを認識することを考えると、通常はとんでもないことになります。たとえば、R
だけズレたものを考えてみましょう!
疑似ブロックを作ったまま進めるとよいと言う人もいるでしょうが、全てを簡単にしてしまうワザがあります。全て揃った最後にやるべきムーブ(ここではD2
)をスクランブルの前にやるだけでよいのです。(なので、この手法は「プリムーブ」と呼ばれます)さあ、やってみましょう!
プリムーブで修正したスクランブル Example
R2 F L2 D' //2x2x2 B' U2 R' U2 R2 U R //クロス、2つ目のペア U2 F' U F U' F' U' F //3つ目のペア L U2 L' //4つ目のペア B L' B' U' B U L U' B' //OLL F2 D' L2 D F2 R2 D B2 D' R2 //PLL
このような解答を見つけたときには、プリムーブを解答の最後に付け加えることで元のスクランブルに対する解答になると覚えておきましょう。一つ前の節で見たものはこうして得られたものです。複数手のプリムーブをやることもできます。例として次のソルブを見てみましょう。これは私の最初の公式ソルブで、元イタリア記録のものです。スクランブルする前にプリムーブを入れるのを忘れないようにしてください。
プリムーブで修正したスクランブル Example
Premoves: D2 B2 R2 B' R2 B //2x2x2, B2というプリムーブをここで見つけた D L2 F D F2 //2x2x3 L' D F' D2 F D' //F2L-1, D2というプリムーブをここで見つけた L' D * L' F L' F' D' L' //3コーナー以外完成 * = B L' F L B' L' F' L //3コーナー
3.2.3 NISS
前の節の最後の例では、2つのプリムーブを、2つの違う時点で見つけました。2つ以上のプリムーブが必要な疑似ブロックを見つけるのは少し難しいです。たとえば次のスクランブルを見てみましょう。
F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'
同じように2x2x1ブロックから始めてみましょう(R2 F'
)。ここにD F'
というプリムーブを加えることで2x2x2ブロックができることに気づくのは、たとえ熟練者でも難しいでしょう。加えると次のようになります。
スクランブル:D F' F' L2 F2 U2 R2 B R2 F' R2 D2 U2 L' U' B' U R U L2 F2 L'
ここにR2 F'
をして2x2x2ができる
D F'
というプリムーブを加えてから、R2 F
をした状態(DFRコーナーから見たもの)
しかし、NISS (Normal-Inverse Scramble Switch)を知っていれば、こういったプリムーブを見つけることはそう難しくありません。 このテクニックは2009年にRazoux Schultzによって最初に考案されました。
ここ説明する概要は、Tomoaki Okayamaによる素晴らしい投稿によるものです1。最も重要なのことは次のようにまとめられます。
スクランブルと解答は、単一のムーブのループ配列として考えることができ、これはキューブの状態にまったく影響しない。
これだけではわかりにくいので解説しましょう。たとえば、抽象化して、A B C D
をスクランブル、p q r s
をそれに対する解答と考えてみましょう。A B C D p q r s
という配列で、キューブは完成状態に戻ります。
ここで、同じように、次のような「ズラした」配列をいくつか考えてみると、どれもキューブの状態に影響しないことがわかります。(崩れません)
s (A B C D p q r s) s'
= s A B C D p q r
r s (A B C D p q r s) s' r'
= r s A B C D
q r s (A B C D p q r s) s' r' q'
= q r s A B C D
p q r s (A B C D p q r s) s' r' q' p'
= p q r s A B C D
D p q r s (A B C D p q r s) s' r' q' p' D'
= D p q r s A B C
. . .
もちろん、逆手順にしてもキューブの状態に影響しません。
さて、D2
を使う最初のプリムーブの例では、このループは次のようになっていました。
(スクランブル) R2 F L2 D'
(他のムーブ) D2
言い換えれば、ここでの「R2 F L2 D'
(他のムーブ) D2
」をスクランブルに対する解答と見なすことができるわけです。つまり、「R2 F L2 D'
(他のムーブ)」を「D2
(スクランブル)」に対する解答と見なすこともできます2。
プリムーブの仕組みを理解するにはこれで十分だと思います。このことを知っていれば、通常のスクランブルに対する部分解答と逆スクランブルに対する部分解答を見つけることができるのです。 つまり、どういうことでしょうか? 同じスクランブルで同じようにR2 F
から考えてみましょう。この時点で、(W)を何らかの手順と考えると、解答はR2 F (W)
となることがわかります。ここでのループ配列は次のようになります。
(スクランブル) R2 F (W)
前にも言ったように、これの逆手順は「同一」のループです。(逆スクランブルを使って解答を探すのと同じです)
(W)' F' R2 (逆スクランブル)
なので、(W)' F' R2
を(逆スクランブル)
に対するに解答、またたとえば(W)'
をF' R2 (逆スクランブル)
に対する解答と考えることができます。このように、次の一般則を導くことができます。
通常スクランブルで見つけた手順の逆手順を、逆スクランブルに対するプリムーブとして使うことができる
仮に、逆スクランブルに対してF' R2
というプリムーブを加えてから(K)
という解答を見つけたとしましょう。すると、 (K)
は上に示した(W)'
と同じような効果になるでしょう。これで終わりです!最終解答は R2 F (K)'
という形になるでしょう。
このプロセスは繰り返すことができます。逆スクランブルに対して上のプリムーブを加えてからF D'
をすると、2x2x2ブロックができたがあまりうまく続かなかったとしましょう。この時点で(さらに)ノーマルスクランブルに戻ることができます。 今度はD F'
をプリムーブとして考えます。まとめると、ループした配列は次のようになります。
F' R2 (逆スクランブル) F D' (まだ見つかっていないムーブ)
これを逆にすることで別のループを作ることができます。
(まだ見つかっていないムーブの逆) D F' (スクランブル) R2 F
つまり、ここでは D F'
を本来のスクランブルに対するプリムーブ、 R2 F'
はスクランブルのあとのムーブとしてみなすことができます。実例を見るともっとはっきりとわかるでしょう。3
ノーマルスクランブル | 逆スクランブル |
---|---|
R B U L’ U’ B U2 D2 F D R L D B2 L2 D’ F2 D2 L2 D | D’ L2 D2 F2 D L2 B2 D’ L’ R’ D’ F’ D2 U2 B’ U L U’ B’ R’ |
まずは逆スクランブルで B L' U F2
といういいスタートがあります。
(逆スクランブル) B L’ U F2
これをノーマルスクランブルに適用します。(F2 U' L B'
をプリムーブにして)D' B' U B2 R2
とするとつながりがよいです。
F2 U’ L B’ (スクランブル) D’ B’ U B2 R2
さらに逆スクランブルに適用します。(R2 B2 U' B D
をプリムーブにして) B L' U F2
と回します。
R2 B2 U’ B D (逆スクランブル) B L’ U F2
このまま逆スクランブルで続けてもよい手順があります。R B R' U R' U2 R B
でF2Lを完成させましょう。
F2 U’ L B’ (逆スクランブル) D’ B’ U B2 R2 R B R’ U R’ U2 R B
最後にLLを揃えます。
LL: U2 R' U2 R' D' L F2 L' D R2
そしてプリムーブをキャンセルする補正をしましょう。
R2 B2 U' B D
最終解答: D’ B’ U B2 D’ L F2 L’ D R U2 R U2 B’ R’ U2 R U’ R B’ R’ F2 U’ L B’
訳注:
ノーマルスクランブルとインバーススクランブルを行ったり来たりするNISSの手法はプリムーブを自然に拡張した手法ですが、理解するまでがなかなか大変なものだと思います。NISSについての日本語レファレンスとしては、やはりWRCCの解説記事を読んでおくと間違いないでしょう。また、NISSを使ったソルブ例を詳しく解説したものとしては、まっしゅ氏によるFMCアドベントカレンダーの記事が読みやすいと思います。翻訳者はこれを読んでNISSの流れがようやく理解できました。
6. NISS - WRCC FMC入門
FMC Advent Calendar 2019 3日目 - きゅーびんぐまっしゅるーむ
このような(NISSを繰り返す)解答を短く簡単に書くには、逆スクランブルでのムーブをカッコで囲むという表記を使うとよいでしょう。今ではこのような表記は広くFMC競技者に受け入れられていますが、NISSを知らない初心者が説明なしで見ると混乱するかもしれません。
たとえば、Guusのソルブであれば次のようになります。
NISS Example
(B L' U F2) //逆スクランブルでのよいスタート D' B' U B2 R2 //つながりもよい (R B R' U R' U2 R B) //F2L (U2 R' U2 R' D' L F2 L' D R2) //LL
最終解答にまとめるときには、ノーマルスクランブルに対するムーブを上から順に進んで行き、そして逆スクランブルに対するムーブを逆向きに書いていきましょう。たとえば、カッコ付きの記法で次のような解答ができたとしましょう。
A B
(C
)
D
(E F
)
(G
)
すると、最終解答は次のように書きます。
A B D G' F' E' C'
3.3 Reverse NISS
これは広く知られたテクニックではありませんが、役に立つ場合もあります。「2.4.9節 Conjugateをして揃える(Conjugate and Solve)」や「2.6.1節 戻ってやり直そう (Go Back and Change your Solve)」の両方を改善したものと考えてもいいでしょう。
少しだけ(4~8個)ピースを無視すればよいスケルトンになる手順を見つけたとしましょう。ここでインサートして揃えるのが普通ですが、このピースのステッカーの色に一つも共通のものがない(つまり全て違う層にある)ときは、インサートするアルゴリズムを見つけるのが非常に大変でしょう。
ここでの仕掛けはこうです:(スケルトンを作る途中の)ソルブの中で全ての未処理ピースが単一の層で共役(conjugate)になる点を見つけて、このソルブを「分割」してしまうのです。分割した前半のムーブは全てプリムーブとして考えます。これがReverse NISSと呼ばれる所以です。さて、このとき「Last Layer」だけが残った状態になります。必要なら何手かのセットアップをはさんでもいいでしょう。
では実例を見てみましょう! 4
Reverse NISS Example
プリムーブ: R2 F2 U R' U' F D2 * F' U2 //2x2x3 R D R' D2 B2 //F2L (5ピース以外全部) R2 //プリムーブを戻す * = (F R) F D F2 R F R2 D R D2 (R' F') //5ピース
インサーションの中にあるF R
というムーブで全ての未処理のピースを単一の層で共役可能にしています。これを加えると、スケルトンは
F2 U R' U' F D2
F R
*
R' F'
F' U2 R D R' D2 B2 R2
となります。ここで*
のポイントでソルブを「分割」してみましょう。
すると、R' F' F' U2 R D R' D2 B2 R2
がノーマルスクランブルに対するプリムーブとなります。まとめると次のようになります。
プリムーブ:R' F2 U2 R D R' D2 B2 R2
F2L: F2 U R' U' F D2 F R
LL: F D F2 R F R2 D R D2
3.4 EO中のNISS利用 (Using NISS during EO)
よいEOが見つけられないとき、NISSが役立つときがあります。ノーマルスクランブルで1手か2手だけ動かすことで、悪いエッジ (Bad edge)の個数を減らすことができることがあるでしょう。残った悪いエッジがノーマルスクランブルで悪い位置にあったとして、逆スクランブルにスイッチしてもっといい位置に移動しないか試してみることができます。もちろん、逆スクランブルからスタートして、途中でノーマルスクランブルにスイッチしてからEOを終わらせる順番でもよいです。
次のスクランブルを見てみましょう。
スクランブル:R’ U’ F L F L B2 L2 U2 B2 L B2 R B2 L2 U F’ D U’ F2 R’ B R’ U’ F
たとえば、F/B軸でのよいEOを探しているとしましょう。しかし、6手かかるムーブ(たとえばF B L' U D' F
)より良いものが見つけられません。逆スクランブルでもそれほど状況は変わらず、6手かかります。(たとえばF B L' U D' F
)
しかし、ここでノーマルスクランブルに戻って、EO手順の最初の2手(F B
のこと)をやったところで立ち止まってみましょう。この時点でF/B軸に対する悪いエッジは4つ(UR, RF, DL, DR)しかありません。しかし、最良の場所ではありません。ここでEOを逆スクランブルにスイッチすることで簡単になるでしょうか?やってみましょう!
プリムーブ:F' B'
逆スクランブル:F’ U R B’ R F2 U D’ F U’ L2 B2 R’ B2 L’ B2 U2 L2 B2 L’ F’ L’ F’ U R
すると、たった3手のムーブ(U' L F
)でEOを解消できます。すなわち、5手のEO処理が見つかったということです。上述した表記を使えば、 F B (U' L F)
と書くことができます。
数手ごとに簡単なEOがないかをチェックするためにスクランブルをスイッチするのは時間がかかります。しかし、練習すれば何度もやらなくてもよくなります。上のスクランブルに戻って、F B
のムーブをしたときに何が起きているかをよく見てみましょう。ここで探しているのは、スイッチした後に4つの悪いエッジがよい場所に移動しているという状況です。しかし、3.1節で説明したように、逆スクランブルを使ったときにエッジがノーマルスクランブルのどこに移動するかを知る手段があります。どのエッジの向きが揃っていないかを確認することができます。
たとえば、上記のケースでの(逆スクランブルでの)悪いエッジはDF, UL, UB, RF5にあります。つまり、スイッチしたあとでは、悪いエッジはそれぞれDF, UL, UB, RFに配置されます。ノーマルスクランブルで続けた場合のものよりも簡単なEOになるかどうかを判断することは、最初は難しく感じるでしょう。しかし、練習を積むことで3手でEOを揃える「パターン」がわかってきます。
このテクニックを練習したいなら、F/B軸に対する5手EO手順が他にないか探してみましょう。この例では逆スクランブルから始めて、数手回してから、ノーマルスクランブルに戻ってきています。6
3.5 役立つアルゴリズム (Useful Algorithms)
気付いたかもしれませんが、一つ前のソルブ例ではあまり知られていないであろうOLL手順(R U R2 F R F2 U F (U2)
)を使いました。これは特に役立つアルゴリズムで、ピースの位置を変えずに向きだけを変えることができます。
一般的にLast Layerの最短アルゴリズム(9~10手以下まで)を覚えておくと役に立ちます。全手順のリスト(回転、左右対称、逆手順は法とする)を作りましたので、こちらを参照してください。
「決してLast Layerに影響を与えずにF2Lを完成させてはならない」ルール(役立ちます!)を破ろうとするなら、Last Layerを短い簡単なアルゴリズムで揃えられると嬉しいでしょう。こういうケースではたくさん知っているほど嬉しいことがあります!
ちょっとしたコツも共有しましょう。Last Layerのアルゴリズムを使うときには、AUF (U面合わせ、Adjust Upper Face)をその前後で試してみましょう。前後でキャンセルするかもしれません。
少なくとも6手~9手までのアルゴリズムを知っておくといい理由はこれだけではありません。さらに2つあります。1つ目は、Last Layerの正確なアルゴリズムを知らない場合やF2Lがまだ終わっていない場合であっても、アルゴリズムを使うことでよいスケルトン(3コーナーなど)になることがあるからです。数手キャンセルがあるかもしれません。
2つ目は、アルゴリズムを学ぶことで、ブロックの作り方、F2Lの揃え方、スケルトンの作り方など、違うやり方を知ることができるからです。たとえば、T permの最適手順を見てみましょう。
R2 Uw R2 Uw' R2 y L2 Uw' L2 Uw L2 (U')
これはF2Lアルゴリズム(R2 Uw R2 Uw' R2
)を2回繰り返しているだけです。
単にアルゴリズムを学ぶだけでなく、アルゴリズムから学ぶこともできるのです。
3.6 ペア分析 (Pair Analysis)
これはとても曖昧なテクニックであり、直感に基づいています。これを使うことで、ソルブが有利に進むかどうかは実証されていません。では、ペア分析とはどんなものでしょう?「ペアを分析する」というのは、スクランブルの中にあるいくつかの要素を考慮に入れるということです。たとえば
- 既にできているペアはあるか : これは言うまでもありません。
- 1手で揃うペアはあるか : これを見つけるには、前に書いたように、「総当たりテクニック」を使うこともできますし、一目見て判断できるように練習することもできます。さらに言えば、疑似ペア(pseudo pair)の認識方法を知っておくことも役に立つことがあるでしょう。ノーマルスクランブルや逆スクランブルでペアを作る手順が見つかれば、最初の1手として使うほか、その逆向きのスクランブルに対するプリムーブとしても使えます。
- 悪いペアはあるか : コーナーとエッジのペアのどちらかがねじれていて、正しくマッチしていないものがあります。直感的ですが、こういったペアは悪いペアなので、できるだけ早く壊すのがいいでしょう。
このテクニックについてはドキュメントがたくさんあるわけではありません。特に「悪いペア」についてはまるでありません。Guus Razoux SchultzがTwente Open 2012の第一試技についてよい分析をしたものがspeedsolving.comに投稿されています。7
3.7 歪んだセンターで揃える (Solving with Skew Centers)
コーナーファーストという考え方を踏まえると、このテクニックを自然に理解しやすくなるでしょう。しかし、それ以外の手法でも使うことができるテクニックです。
コーナーとエッジをインサートするやり方はすでに見ましたが、ここではインサートすることでセンターを揃えるやり方を見てみましょう。ソルブ中にセンターを無視して揃わないままにしておき、偶数手のスライスムーブ8で揃う状態にします。すると、M E M' E'
やM E2 M' E2
などのアルゴリズムで揃えることができるようになります。9
歪んだセンター:M E M' E'
で揃う状態
もちろんスライスムーブ(内層回転ムーブ)をしなければならないので、歪んだセンターを揃えるには8手必要になります。しかし、心配しないでください。この8手をキャンセルできるチャンスはとても沢山あります。このインサートを使うと、平均で3~4手でセンターを揃えることができます。
どうしてこんなことになるのでしょう?実は、この手順には複数の揃え方があるのです。
M E M' E'
= S M' S' M
= E' S' E S
M E2 M' E2
= M' E2 M E2
= M S2 M' S2
= M' S2 M S2
さらに2つ目は、逆手順にしても同じように揃います!
1つ目のケースを見てみましょう。センターを正しい位置に動かすためのスライスムーブをするときに、少なくとも4手はキャンセルすることになります。しかしそれだけではなく、もっと多くキャンセルする場合もありますので後で書く例を見てみましょう。
この手法の弱点は書き直すのに時間がかかるということです。センターを動かすとき、ほかのピースにも同様に影響するように修正して書く必要があります。結果として、慣れていないと非常に時間がかかります。
では、私が世界大会2017で最後にやったソルブを例として見てみます。NISSとコーナーインサートも使っています。ここではセンターを無視すれば2x2x2ブロックがすでに出来ているという状態です!
Skew Centers - Example
(U2 L2 B2 U) //3ペア (4/4) R2 D2 R2 //ブロック (3/7) (L B') //2x2x3 + square (2/9) (L2 U2 L' U2 L' U2 L) //3コーナー以外完成 (7/16) 逆スクランブルでのスケルトン: U2 L2 B2 U L + B' L2 * U2 L' U2 L' U2 L B2 L2 B2 * = F' D F U2 F' D' F U2 //3c (6/22) + = M' S' M S //センター (4/26)
解答を作るにあたって、最初はS' M S M'
などの等価な手順を使ってセンターを揃えていました。そしてノーマルスクランブルでの解答を考えるにあたって、コーナーインサートを含む手順に至ったのです。この時点から解答を完成させるまでは、キューブに触れる必要もありません。
上記のインサートを含む解答を見つけた後で、センターファーストを使っていないかのように、すべてのムーブを書き直さなければなりません。これは簡単な変換です。R
はU
に、D
はF
に、という風に変換していくだけです。
次に3つあるコミュテータのうちのどれかをインサートして、センターを揃えます。センターピースは持ち替えやスライスムーブがなければ動くことはないので、センターを揃えるコミュテータはどの時点も使うことができます。このことさえ知っていれば、実際にキューブを回してみる必要はありません。単に、3つのコミュテータの1つを選んで、最もキャンセルが起こる場所を探せばいいだけです。
最後に、スライスムーブをインサートしてセンターを揃えたら、二回目の(そして最後の)書き直しをします。インサートしたところより前のムーブは変わりませんが、後のムーブは一回目と同じように変換しなければなりません。部分的解答を書くのに慣れていれば、最初のバージョンから最後のムーブだけをコピーすればよいですが、ここでは私はそうせず、解答用紙にとても乱雑に書くのでした。
コツをもう一つだけ。時間がないなら、センターをインサートした後にキューブの持ち替え記号を書いてしまい、書き直しの時間を節約してもいいでしょう。しかし、キャンセルを見逃さないようにしてください。スライスムーブでのキャンセル探しは通常よりもやりにくいですよ!
3.7.1 歪んだセンターとNISS (Skew centers and NISS)
一つ前のソルブ例ではNISSを使いましたが、逆スクランブルに対するスケルトンの最後の3手はR2 D2 R2
ではなく、B2 L2 B2
になっています。これはノーマルスクランブルで解いたときの最初の3手と同じです!
するとどんな問題が起こるでしょうか? それは、後でやろうと思っていたインサートによってセンターが動いてしまい、その後に続くムーブがすべて変わってしまうということです!逆スクランブルに対するスケルトンの最初の13手(U2 L2 B2 U L B' L2 U2 L' U2 L' U2 L
)をやってみましょう。そして次に、M S’ M’ Sでセンターを揃え、U面が白、F面が緑の向きに持ち替えましょう。単にR L' U D' B F' R L'
とやってもよいです。ここからは「正しい」プリムーブのR2 D2 R2
を使って、3コーナーのスケルトンにすることができます。
この問題はどうやって解決しましょう? このケースでは、ノーマルスクランブルではたった3手しか回していないため、適応すべき正しいムーブがどれなのかを簡単に知ることができます。しかし一般的にはやりにくいものです。やり方は大きく2つあります。 1つ目は、ノーマルスクランブルでのムーブから逆スクランブルでのムーブを知るための「変換表」を用意することです。このケースでは次のような表ができます。
ノーマルスクランブル: | B | F | L | R | U | D |
逆スクランブル: | U | D | F | B | R | L |
なので、ノーマルスクランブルでのR2 D2 R2
は、逆スクランブルではB2 L2 B2
になります!この手法は4つのセンターだけが残されているときには特に役立ちます。そういうときに、この表を毎回書かかなくてもいいようにしっかり覚えておきましょう。
2つ目の方法は、持ち替えを使い、センターを無視した状態で揃ったピースを本来の位置に戻すことです。たとえば、(逆スクランブルでの)スケルトンは次のようになります。
逆スクランブルでやったムーブ: U2 L2 B2 U L B' L2 U2 L' U2 L' U2 L
持ち替えして修正する: x z'
ノーマルスクランブルでやったムーブ: R2 D2 R2
逆スクランブルでのスケルトン: U2 L2 B2 U L B' L2 U2 L' U2 L' U2 L
x z'
R2 D2 R2
くれぐれも持ち替え記号には注意してください! 10
3.8 高度なエッジインサーション:フリースライス (Advanced edge insertions: free slices)
エッジだけが残ったスケルトンができたとしましょう。
このエッジを揃えようとするとき、通常の方法としては、エッジコミュテータ(3点交換)をインサートしたり、エッジのダブルスワップ(M2 U2 M2 U2
など)をインサートしたりすることができます。この他に、さらに高度なテクニックとして、[M2, U R U']
などのエッジコミュテータを特殊なケースとして扱う方法があります。
背後にある考え方を説明しましょう。たとえばM
というムーブを考えると、これはHTMでは2手になりますが、興味深い性質があります。センターを無視すれば、これはエッジの4点交換をしていることになります。(UF→FD→DB→BU→UF) 同じように、M2
はエッジの2点交換を繰り返しています。(UF↔DB、UB↔DF)
このように単純なスライスムーブ(M
やM2
)をインサートすることで、エッジ交換を非常に効率的に揃えることができます!
必要に応じてセットアップしてもよいでしょう。たとえば [R F: M2]
= R F M2 F' R'
はM2
のような2点交換の繰り返しになります。この手法をフリースライス(Free Slices)と呼びたいですが、スライスインサーション(slice insertions)やslicey shenanigansという呼び方が一般的です。
訳注
slicey shenanigansは直訳すれば「いたずらスライス」とか「ごまかしスライス」などと訳すことができます。ここではそのまま使います。
しかし、センターはどうするのでしょう?これは大きな問題ではありません。スライスインサーションを使って、センターが揃うようなキャンセルが起こるかどうか注意してみたり、最後まで残しておいてから[M, E]
などの手順を追加でインサートしてセンターを揃えたりしてもいいでしょう。追加のインサートをする場合、気をつけなければならないのはパリティが起こらないようにすることです。スライスムーブを使ったインサートの数が偶数になるようにしましょう。(M2
は2回とカウントします) 偶数でない場合、エッジは揃えられません。
ラッキーな実例を見てみましょう。
世界大会2019の第2試技
(B D' R F) //EO + 3ペア (4/4) D2 R U' //2スクエア (3/7) (R2 B2 R) //3c7e (3/10) スケルトン: D2 R U' R' B2 R2 [1] F' R' D B' [2] [1] と [2] にM2をインサートして 3e3c の12手スケルトンを作る 新しいスケルトン: D2 R U' R' B2 L2 B' R' U F' * R2 L2 * = U + R U' R2 L2 D R' D' R2 L2 (6) + = U2 R' D' R U2 R' D R (6)
[1]と書いた1つ目のインサートでは、3エッジを揃えて2手キャンセルしています。これは非常にラッキーなケースです。[2]と書いた2つ目のインサートはもっと標準的なもので、エッジを追加で1つだけ揃えて、3点交換を残し、1つ目のインサートで動いたセンターをもとに戻しています。
最後の2つのインサートは通常のコミュテータです。しかし、注目すべきは、*と書いたエッジコミュテータは[U R U', M2]
であり、M2
直前にインサートされ、最後のスライスムーブをキャンセルしています。[2]の箇所に[U R U', M2]
= U R U' M2 U R' U'
をインサートしてもまったく同じ回答になります。単にセットアップしてからスライスムーブをしているだけです。多くのエッジコミュテータは2つのスライスインサーションの組み合わせでできています。セットアップなしのシンプルなものと、セットアップのあるものです。
では、次の例を見てみましょう。
Another free slices example
スケルトン: U' B' U B' * L2 B2 R2 + F2 R D' R L' F D2 (5e) * = E' + = [R' B' D' B: E]
ここでは、5つのエッジが残ったスケルトンのうち、1つ目のインサートで2つのエッジを揃えて1つのエッジを崩しました。要するに4点交換をして、4つのエッジが残るようになります。2つ目のインサートはセットアップしてから4点交換をしています。
スケルトンの中のどこにスライスムーブにインサートするとよいかを判断するのは、いつも簡単とは限りません。私の場合、多くは試行錯誤しながらやりますが、覚えておくべきコツもあります。
- あまり大きな成果がないように見えるスライスムーブでも、多くの手数がかからないのであれば役立つことがあります。たとえば、
R2 L
というムーブの前後にM2
をインサートすることで、1手削減することができます。こういったスライスムーブでエッジが揃う(ラッキー!)こともあり得ますし、少なくとも揃っていないエッジの数が変わらないということもあります。
多くの場合、私は最初にこういったアプローチを念頭に入れた上でスケルトンを作り始めて、非常に短い数手を使ってもっと単純化できないかを狙うようにしています。そうした上で、3点交換やダブルスワップなどが残ったときに長めのインサートをしてソルブを終わらせます。 - スライスインサーションで何個のエッジが揃うのかを把握することは簡単です。正しい場所に移動するものがいくつあるかを数えて、逆に崩れるエッジの数を数えればよいのです。こういったエッジの正確な交換タイプを推測することは可能ですが、パリティによって難しいものもあります。
たとえば、上に示した1つ目のソルブを見てみましょう。合わせて7つの揃っていないエッジがあり、1つ目のインサート([1]の箇所にあるM2
)で3つのエッジを揃えています。既に揃ったエッジは崩れません。このインサートの後には4つのエッジが揃っていない状態になります。しかし、M2
はセンターのパリティを生みませんから、ここから先の可能性は1つだけです。この残った4つのエッジは2点交換を2回繰り返す(ダブルスワップ)ことで揃えられます。 - 場所はあっているけれどねじれたエッジや、
UF→UR→FU
などの「ねじれた交換」を避けるようにしましょう。もしスケルトンの中にあるなら、最初のスライスムーブで取り除けないか試してみましょう。 - 最初にEOを処理をしたスケルトン(あるいはDomino Reduction。付録D参照)では、よいエッジのインサートが見つかることが多いです。これは普通のアルゴリズム(コミュテータ、ダブルスワップ)でも、フリースライスでも同じことです。
3.9 コーナーファースト (Corner First)
「コーナーファースト」は厳密に言えば解法ではなく、むしろ解法のクラスと言ったほうがいいものでしょう。CFと略されることもあります。たとえば、RouxはCF解法と見なすことができます。
ルービックキューブの揃え方を自分自身で見つけた人たちの中では、コーナーファーストのアプローチを取った人が多数派でしょう11。直感的にキューブを揃えるようとするなら、コーナーとエッジを別々に考えるのは実に理にかなっていて、簡単です。さらに、コーナーを先に揃えてしまえば、エッジをもっと自由に動かして揃えることができるようになります。つまり、内側の層はコーナーに影響することなく動かすことができるのです。
ところが、これはFMCにおいては不利にもなる性質です。内側の層を回転させると2手としてカウントされてしまいます!こういう状況であるにも関わらず、少なくとも2名のFMCエキスパートはコーナーファーストのテクニックを使っています。Attila HorváthとJavier Cabezuelo Sánchez(FMCのスペイン記録保持者)です。この2名が共通して同意するのは、コーナーファーストはFMC向きの素晴らしい解法であると同時に、1時間という制限時間がある状況にはあまり向いていない、ということです。実際、Javierの公式記録のほとんどはDNFです。
Attila Horváthは、ほとんどの場合Guimond(向きを最初に揃える)に近い解法でコーナーを揃えています。このステップではセンターは気にしません。時々プリムーブやNISSを使うこともあります。それから、自分自信の見つけた解答を少しずつ修正していき、内層のムーブをインサートして、少なくとも2-3個のエッジは揃えてしまいます。最後に残ったエッジを揃えますが、特に決まった順番はありません。Attilaは最後までセンターを揃えないままでいることもあり、3.7節で見たようにインサートしてセンターを揃えます。彼の解法をもっと知るには、speedsolving.comのフォーラムで彼の投稿12を読んで直接聞いてみるのがいいと思います。喜んでテクニックを教えてくれるでしょう。
Attliaのソルブにコメントを付けたものがあります。
まずは短い手順でコーナーを揃えます。スクランブルが難しそうなら、いつもはプリムーブなどを使います。 このケースでは、ノーマルスクランブルに対して D B というプリムーブを見つけました。 コーナーの解法はこうなります。 B2 D' B' D2 B (Guimondの1ステップ目:コーナーの向きを揃える) B2 D' R2 F2 (全てのコーナーを揃える) プリムーブなしのコーナー解法はこうです。 B2 D' B' D2 B' D' R2 F2 D B 逆スクランブルでのコーナー解法はこうです。(1つ前のものの逆手順) B' D' F2 R2 D B D2 B D B2 このバリエーションとして、より多くのエッジを揃えてみます。 B2 M b d' M' F2 R2 d2 D' b d2 B (コーナーまで2手、5エッジ揃う) ここでセンタームーブを除いて、このように書きます。 B2 L' R U R' D' U L2 D2 F2 B' R U2 R 2手目のMは最初の4エッジに影響しませんが、最後にラッキーを引くために入れています。 次のステップは明らかです。3つのエッジを揃えるだけです。 U D セットアップでL' F' U2 D2 B Rという3エッジのアルゴリズムを回して、Eスライスのスキップが置きます。あらかじめMをいれておいたおかげです。
このチュートリアルの初版から、Attliaは徐々に解法を変化させてきました。最初にコーナーの向きを揃えるのは変わりませんが、エッジに注意しながらコーナーを完全に揃えるのではなく、COファーストのドミノリダクションをやるようになっています。たとえば、Speedsolving.comのこの投稿や AlexandrosとTommasoの書いたドミノリダクションのチュートリアルにある実例を見てみるといいでしょう。
Javierのコーナーの揃え方は少し違います。一段目のコーナーを先に揃えてから、残りの4つを揃えるというやり方です。そして、インサートをしてエッジを揃えようとします。彼は逆スクランブル、プリムーブ、NISSなどのテクニックは使いません。Attliaと異なるのは、コーナーを揃えている最中にもセンターに注目しているということです。Speedsolving.comのこの投稿も見るといいでしょう。
AttliaとJavierはCF解法しか使いません。「何の制限もするな」というFMCのセオリーには反していますが、実際素晴らしい記録を残しているのです。
3.10 置換して短くする (Replace and shorten)
よい解答を見つけて書いてみたところ、その中のどこか短い部分がかなり非効率的である場合もあるでしょう。ソルブを通常のステップで進めている間はなかなか気付きにくいものです。特にNISSやインサーションの組み合わせを使っていると、最終解答で隣り合っている回転記号は考える過程とはまったく別物になります。
このような非効率的な一部があるなら、等価でもっと短い配列に書き直すことができ、もっとよい解答ができます。ひとつのやり方は、解答をもう一度見直して非効率的な部分を探すことです。おそらく「F2L-1に至るステップ」や「ドミノを作るステップ」(2.5.2節や付録Dを参照)に注目することでしょう。対象がドミノを作るステップでない限り、このテクニックは非常に練習がしづらいです。ドミノリダクションのステップなら、付録Dの最後にある実例を見るといいでしょう。また、AlexとTommasoのドミノリダクションのチュートリアルを読むともっと詳しく書いてあります。
「怪しい」ところが見つかったら、その部分をスクランブルとして使うようにして、完成状態のキューブに対して適用してみましょう。そして、もっと短くならないかを検討します。もし短くできるなら、元々の配列を短いものに書き直すだけで、数手短くなります!元々の配列と同じ手数のものを見つけられたら、その前後のどこかでキャンセルしないかを試してみましょう。
F2L-1の部分で「置換して短くする」ことの実例を挙げます。
スクランブル: R' U' F U2 L' D2 B2 L R F2 R2 D' R2 U' L' D' B2 D2 F' D2 R' U R' U' F
解答: F R L U' B F2 D' F2 D F2 D2 F2 [D R' L D' R D L' D'] L' D L D L2 U
カッコで囲まれた部分 D R' L D' R D L' D'
をスクランブルのように使ってみましょう。すると、次のようになります。
これを B R' D R D' B'
と解くことができるので、解答は次のように短くなります!
新しい解答: F R L U' B F2 D' F2 D F2 D2 F2 [B R' D R D' B'] L' D L D L2 U
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https://www.speedsolving.com/threads/the-fmc-thread.13599/page-52#post-667292 ↩
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「スクランブル」を解答に対する解答としてみなすこともできます! ↩
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Taken from here: https://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-10#post-258791 ↩
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じつはこのソルブでは、揃っていないピースに矢印やバツ印を書くことで簡単にアルゴリズムを認識できるようになるのです。なので、私はここではReverse NISSというテクニックを実際には使いませんでしたが、解答自体がよい実例になるので書きます。 ↩
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ノーマルスクランブルではそれぞれUR, RF, DL, DR にあたります。しかし、現時点では無視してよいです。 ↩
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実はこのスクランブルは非常にレアな偶然が重なっています。F/B軸に対してノーマルスクランブルと逆スクランブルの両方で6手が最適手順であり、どちらから始めてNISSを使ったとしても5手が最適となっています。 ↩
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https://www.speedsolving.com/forum/threads/the-fmc-thread.13599/page-62##post-721942 ↩
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パリティを避けるためにこの条件が必要です。 ↩
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実はコミュテータです。
M E M' E'
=[M, E]
で、M E2 M' E2
=[M, E2]
↩ -
持ち替え記号なしの解答の書き方については、5.1節を参照。 ↩
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たとえば Valery Morozov という人物は自分の解法を解説するチュートリアルを作りました。詳しくはhttps://www.speedsolving.com/forum/threads/a-unique-phase-method-for-a-rubiks-cube.44264/ を参照してください。 ↩
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彼のプロフィールページです。https://www.speedsolving.com/forum/members/attila.10652/ ↩